バタフライピーに口づけを

アクション

第3回「しなコン!」レギュラー部門受賞作品

とある港町メローネ。過去に幼馴染であるエルダは海賊船トリカブトに攫われた。エルダの行方を探す中、アコニはとある港でエルダの息子、チョウを見つける。あの問エルダを守れなかった幼馴染の3人は、チョウを守り育てる。そんなある日、トリカブトがメローネへと再び足を踏み入れる。花の香りを乗せた風が、この物語を誘う。

はじめにお読みください

  • 本作品は第3回「しなコン!」レギュラー部門受賞作品です。
  • 本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
  • 本作品は「こえコン!」関連イベントや公式配信での上演だけでなく、一般の声劇配信などでもご利用いただけます。なお、その際の台本の利用規約については、作者である「yuka」様のサイト「声劇台本置き場」に掲載されている「利用規約」に準じます。ご利用の際は、必ず下記リンク先をご確認ください。
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作品概要

タイトル

バタフライピーに口づけを


作者

yuka


☆yukaの声劇台本置き場☆

ジャンル

ファンタジー


上演時間

約30分


男女比

🚹3:🚺2:不問1

登場人物

リオン

♂。旅人。ロジー、アコニとエルダの旧友。


アコニ

♂。トリカブトの弟。副船長。


チョウ

不問。少年。とある港で奴隷をしていたところアコニに助けられロジーの店へ。


ロジー

♀。バー・ニワトコの店主。


トリカブト

♂。海賊、トリカブト船の船長。エルダを攫った張本人。チョウの父親。


エルダ

♀。3人と幼馴染。港で攫われた。チョウの母親。

シナリオ

 

過去。


 

波と風の音が響く。


 

遠くで汽笛の音がする。


リオン

エルダー!エルダー!!


アコニ

いたか?!


リオン

街にはいない。そっちは?


アコニ

森の方もいなかった。


リオン

じゃあ、海の方は。


アコニ

今、ロジーが探している。


リオン

俺たちも行ってみよう。


 

ロジーが泣きながらやってくる。


リオン

ロジー!エルダは?


ロジー

…ごめんなさい。


リオン

何があったんだ。


ロジー

トリカブトの、船が…


アコニ

トリカブト…


リオン

じゃあ、エルダは…


ロジー

ごめんなさい!ごめんなさい!


リオン

行こう。


アコニ

何処へ。


リオン

港だよ!エルダを探すんだ!


アコニ

危険だ。


リオン

だったら尚更!


ロジー

もう、いないの。…守れなかった。ごめんなさい…


アコニ

もうあやまるな。…ロジーが、無事でよかった。


リオン

くそっ!


アコニ

俺たちが、必ず助け出すから。もう泣くな。


 

悲しみに暮れる三人。


 

波の音と風が打ち消す。


 

月日は流れ現在。


 

バー・ニワトコ。


 

ドアを開けるベルが鳴る。


ロジー

ごめんなさい。まだ準備中で…


リオン

よっ。


ロジー

リオン。


リオン

ただいま。


ロジー

いつこっちへ。


リオン

さっき帰ってきたとこ。


チョウ

あ!リオン!


リオン

おー!チョウ!ただいま。


チョウ

おかえり!


リオン

はい。おみやげ。


チョウ

何これ?


リオン

覗いてみな。


 

チョウ、もらったスコープを覗く。


チョウ

わぁ!ねぇ、この望遠鏡キラキラして見えるよ!


リオン

はは。それはな、万華鏡っていうんだ。


チョウ

万華鏡?


リオン

綺麗だろ?


チョウ

うん。


リオン

外で見るともっとキラキラするぞ。


チョウ

本当?ちょっと見てくる!


ロジー

遠くへ行かないでね。


チョウ

わかってる。庭までね。


 

チョウ、庭へ。


リオン

随分元気になったな。


ロジー

そうね。


リオン

最初来たときは、言葉も発せない捨てられた子犬みたいに怯えて。


ロジー

そんな可愛いもんじゃなかったわよ。


リオン

そうか?


ロジー

はい、レモネード。


リオン

お、サンキュー。(レモネードを飲み)はぁー!これを飲むと、帰って来たって実感する。


ロジー

ふふ、相変わらずね。昔から店に駆け込んでは、よくねだって。


リオン

そうそう。今度はロジーが、ヒルダおばさんの味を受け継いだってことだ。


ロジー

だって、他にいないでしょう。


リオン


ロジー

…恨んでたのよ。


リオン

え?


ロジー

此処に連れてこられた時のチョウは、この世の全てを恨んだような…怒りとも、憎しみともつかない目をしていた。


リオン

そうだったけか。


ロジー

貴方のおかげね。随分笑うようになったわ。


リオン

俺?それならロジーだろ。


ロジー

リオンが来た時が一番元気。安心した顔をしてる。


リオン

そりゃ、帰ってきた甲斐があったな。


ロジー

いつまでいるの?


リオン

さぁ。全ては風任せ。


ロジー

相変わらず自由ね。


リオン

それが取り柄だからな。アコニは?最近来たか?


ロジー

随分会ってないわ。


リオン

その方がいい。アイツは、裏切り者だ。


ロジー

そんな言い方。


リオン

そうだろう。悪逆非道な海賊船。人身売買に窃盗、人殺し…聞こえてくるのは悪い噂ばかりだ。アイツもそれに加担してる。


ロジー

何か事情があるのよ。


リオン

トリカブトは、エルダを攫ったんだぞ。アイツは今その船の副船長だ。許せるわけがない。


ロジー

それでも、チョウを助けて、此処に連れてきたのはアコニよ。


リオン


ロジー

私たちのアコニを、信じましょう。


リオン

…(レモネードを飲み干し)また来るよ。


ロジー

もう?ゆっくりしてけばいいのに。


リオン

まだしばらくいる予定だから。顔は出す。


ロジー

そう。


リオン

営業前に悪かったな。また。


ロジー

リオン。


リオン

ん?


ロジー

おかえりなさい。


 

大海原に浮かぶ海賊船。


 

トリカブトの船。


 

浴びるように酒を飲んでいるトリカブト。


アコニ

おい。何処へ向う気だ。


トリカブト

あぁ?


アコニ

この船だ。航路が変わっている。


トリカブト

ああ。俺が指示した。


アコニ

どうして。次の港まであと少しだぞ。


トリカブト

気が変わったんだ。


アコニ

お前の気まぐれにいちいち振り回されていたら、


トリカブト

(遮るように)ごちゃごちゃうるせぇなぁ!この船は俺の船だ。トリカブト様が行先を決めて何が悪い。


アコニ

航路を決めるのは、副船長である俺の仕事だ。


トリカブト

俺の決定に指図するな。


アコニ

横暴が過ぎるんじゃないか。


トリカブト

口の利き方がなってねぇなアコニ。兄に対する敬意がなってねぇ。


アコニ

俺はお前が兄だなんて一ミリも思ったことはない。


トリカブト

そうつれないことを言うな。唯一の家族じゃねぇか。親父に潰された俺の右目、そしてお前の背中の火傷。離れ離れになる前に約束しただろ。「お前は俺の右目になる。そして、俺はお前の背を守る。」


アコニ

そんなものは、とうに捨てた。


トリカブト

そう簡単に捨てられないさ。だからお前は、大嫌いなトリカブト様の側にいる。


アコニ

…全ては、エルダのためだ。


トリカブト

残念だったな。もう俺のモノだ。


アコニ

エルダは何処にいる。


トリカブト

お前が船長になった暁には、教えてやるよ。


アコニ

そんな気もないくせに。


トリカブト

俺はこの海賊船の船長だ。俺が決めたことは絶対だ。約束は守る。ただ、その前に俺が死んだら…頭のいいお前なら、わかるだろう?


アコニ

…それで、何処に向かっている。


トリカブト

決まってるだろう。メローネだよ。


アコニ

っ!?


トリカブト

たまには里帰りしたかったろ。なぁに、感謝はいらねぇさ。


アコニ

余計なお世話だ。すぐに航路を戻せ。


トリカブト

却下だ。変更はしない。


アコニ

どうして。


トリカブト

決まってるだろ。風が呼んでいるからだ。俺を、あの港へ誘う風が。


 

バー・ニワトコ裏の庭。


 

チョウは帰ろうとするリオンを見かけ。


チョウ

リオンー!


リオン

ん?おー、キラキラ見えたか。


チョウ

うん。ちょっと待ってて。


 

庭から出てリオンの元へ。


チョウ

これ。


リオン

花?


チョウ

あげる。


リオン

庭のだろ。勝手に取っていいのか?


チョウ

庭の花はね、港から来た人たちのためにあるんだよ。


リオン

え?


チョウ

海にいると大地が恋しくなる。花を見ると、故郷や陸を思い出すって。


リオン

ロジーが教えてくれたのか?


チョウ

ううん、アコニ。


リオン


チョウ

アコニが俺にくれた仕事なんだよ。この庭を花でいっぱいにすること。


リオン

そっか。(花を受け取り)いい香りだ。もらってくよ。


チョウ

また来る?


リオン

ああ。じゃあな。


 

ドアを開けるベルが鳴る。


チョウ

ロジー!喉乾いた!


ロジー

手を洗って。


チョウ

レモネードね。


ロジー

はいはい。皆好きね。


チョウ

みんな?


ロジー

うん。リオンも、アコニも…私も、小さい頃からこればっかり。


チョウ

三人は昔から仲良かったの?


ロジー

そうね。小さい頃から一緒だったわ。私たちと…それからエルダっていう、チョウにそっくりの女の子。


チョウ

俺は男だよ。


ロジー

チョウはそうね。でもエルダは女の子だったの。私にとって、姉のような存在だった。


チョウ

俺も会ってみたい。エルダは何処にいるの?


ロジー


チョウ

知らないの?


ロジー

いつか、風が教えてくれるわ。


チョウ

どうやって?


ロジー

風が、花の香りを乗せてエルダに居場所を教えてくれる。帰ってくる場所は此処だよって。


チョウ

じゃあ、庭の花。たくさん咲かせないとね。


ロジー

お願いできる?


チョウ

うん!俺に任せて!


 

トリカブト船。


 

酒を飲みうつらうつらするトリカブト。


トリカブト

ひっく…メローネ…ははっ、懐かしい場所だ。風が運ぶんだ…もうすぐ…もうすぐ…


 

眠りにつくトリカブト。


 

過去の夢を見る。


 

トリカブトの船の上。


 

甲板にエルダの姿がある。


トリカブト

おい、何をしている。


エルダ

花を海に。香りを風に乗せて届けるの。


トリカブト

必要ない。


エルダ

あなたが決めることじゃないわ。


トリカブト

お前の居場所は此処だ。この海、この船の上だ。


エルダ

それは、貴方に


トリカブト

(遮り)自分で、選んだんだろう。


エルダ

…選ばされたのよ。


トリカブト

くだらん。こっちへ来い。(腕を掴む)


エルダ

離してっ!うっ…(具合悪そうに蹲る)


トリカブト

船酔いか?


エルダ

そんなんじゃない。


トリカブト

エルダ。お前まさか…


エルダ

放っておいて!…自分で歩けるわ。


トリカブト

つくづく、生意気な女だ。


エルダ

何でも自分の思い通りになると思ったら大間違いよ。


トリカブト

お前こそ、いつまでも自由でいられると思うな。


エルダ

自由?これが?


トリカブト

そうだ。俺が与えた自由だ。


エルダ

うんざりよ。


トリカブト

この船は俺が絶対だ。俺が王で、法で、所有者だ。誰もお前を迎えには来ない。お前は、俺のものだからな。


エルダ

っ…


トリカブト

そんな泣きそうな顔をするな。エルダ。さぁ、仲直りをしよう。(腕を広げ)自分で歩けるのだろう?こっちへおいで。


エルダ

卑怯者…


 

メローネの港にある酒場。


 

一人酒を飲むアコニ。


 

現れたリオンと目が合う。


アコニ

リオン。


リオン

…よぉ、裏切り者。


アコニ

お前も帰ってきていたのか。


リオン

まぁな。


アコニ

そうか。元気そうで何よりだ。


リオン

お互いな。じゃ。


アコニ

今来たところだろ。付き合え。


リオン

世間話するつもりはねぇよ。


アコニ

(話を聞かず店員に)コイツに同じものを。


リオン

おい、聞けって。


アコニ

お前に頼みがある。


リオン

断る。


アコニ

話くらい聞いてくれてもいいだろ。


リオン

お前たちの悪行に手を貸せってか?嫌なこった。


アコニ

旧友としての頼みだ。


リオン

俺の旧友であるアコニは死んだ。お前は、エルダを攫った船の副船長だ。


アコニ

エルダを探すためだ。


リオン

それで何か手掛かりが見つかったのか?チョウを助けただけじゃないか。


アコニ

チョウは、エルダが生きていた証だ。


リオン

あの子がエルダの子だっていう確証はないだろ。


アコニ

あの目を見ても、お前は信じないのか?


リオン

…お前は、エルダがまだ生きていると信じているか?


アコニ

だから探しているんだろう。俺も、お前も。


リオン

…ん。(ジョッキを差し出し)旧友との再会に、乾杯。


アコニ

…乾杯。(ジョッキを合わせる)


リオン

(ジョッキの中身を一気に飲み)しっかし、変わらないなお前も。


アコニ

何だ。さっきとはえらい違いだな。


リオン

ムカつくんだよ。何にも変わっていないことが。


アコニ

そう思ってくれるか。


リオン

実際そうだろう。


アコニ

海を漂った日々は己が(おのが)姿を変えてしまう。一度変わってしまったら、元の姿なんてわからんさ。


リオン

そりゃ、あんな船に乗ってるからだ。


アコニ

それでも降りるわけにはいかない。アイツを。トリカブトを止められるのは、俺だけだ。


リオン

どうしてそう思う。


アコニ

…兄弟なんだ。


リオン

っ、は?!


アコニ

俺たちの父親は、どうしようもないクズだった。酒を飲んでは暴力をふるい、お金欲しさに俺たちを売った。兄弟はバラバラになり、俺はメローネに辿り着いた。アイツが兄だと知ったのはトリカブト船に乗ってからだ。


リオン


アコニ

俺は、所詮流れ者だ。海を渡るたび、自分がどんどんわからなくなっていく。


リオン

何度でも思い出させてやるよ。俺たちの故郷は、メローネ。バー・ニワトコだ。


アコニ

ありがとう。


リオン

それで、頼みってなんだ。


アコニ

ああ、知っての通りトリカブトの船が今、港に停泊している。船が出航するまで、チョウをバー・ニワトコから連れ出して欲しい。


リオン

トリカブトが、来るってことか?


アコニ

念のためだ。奴にチョウを会わせるわけにはいかない。トリカブトが船を降りる手続きは、少なくとも1日はかかる。焦ってチョウを不安にさせたくない。頼めるか?


リオン

わかった。任せとけ。


 

トリカブトが見る過去の夢。


 

トリカブトの船の上。


 

乱暴に扉を開ける音。


トリカブト

アベルを何処にやった?!


エルダ

何のこと?


トリカブト

とぼけるな。俺とお前の子だ。


エルダ

アベルはもう、この船にはいないわ。


トリカブト

なんだと。


エルダ

貴方の法の下に、あの子を居させるわけにはいかない。


トリカブト

あれは俺のモノだ。どけ。すぐに引き返す。


エルダ

駄目よ!(トリカブトの前に立ちはだかる)


トリカブト

邪魔だ。(エルダを突き飛ばす)


エルダ

きゃっ!


 

机にぶつかる。派手にモノが落ちる。


 

咄嗟に目の前のナイフを手にトリカブトへ向ける。


エルダ

っ、…行かせないわ。


トリカブト

お前、誰に刃物を向けてるのかわかってるのか。


エルダ

もう貴方の好きにはさせない。アベルは私が守るの!


 

エルダ、刃物を手にトリカブトともみ合う。


トリカブト

くっ…!放せっ!!


 

エルダにナイフが刺さる。


エルダ

ぐっ…!かはっ!


トリカブト

っ!エルダ!!


エルダ

…ア、ベル。


 

目を覚まし飛び起きる。


トリカブト

っ!はぁ…はぁ(荒い息を整えて)夢…ん?花の香り。エルダ。いるのか…?


 

花の香りに誘われフラフラと船を抜け出すトリカブト。


 

辿り着くはバー・ニワトコ。


 

庭には花の世話をするチョウの姿。


 


トリカブト

ここは…


チョウ

お客さん?


トリカブト

っ!?…アベル。


チョウ

…誰?


トリカブト

…見つけたぞ。


 

大きな物音。


 

それに気付き外に出るロジー。


ロジー

チョウ?何の音?


 

庭に出るもチョウがいない。


ロジー

チョウ…?何処にいるの?チョウ!!(走り出す)


 

港。


 

チョウを担ぎ船に向かうトリカブト。


チョウ

降ろせ!!


トリカブト

大人しくしろ。


チョウ

嫌だ!


トリカブト

父親の言うことが聞けないのか。


チョウ

お前なんか知らない!


トリカブト

よく覚えろ。アベル。お前の父親、トリカブト様の顔だ。そしてあの船が、お前の生まれ故郷だ。


チョウ

俺の故郷は、バー・ニワトコだ!


ロジー

チョウ!


チョウ

ロジー!


トリカブト

お前は…あの時エルダといた。


ロジー

トリカブト…チョウを離して。


トリカブト

くくっ、臆病者の小娘が。そんな弱腰で、大切なものを守れると思っているのか?


ロジー

守るわ。


トリカブト

あの時も、お前は守れなかった。


ロジー

っ…それは、


トリカブト

止められなかっただろう?エルダが、俺のモノになるのを。


チョウ

ふぐっ!(トリカブトの腕に噛みつく)


トリカブト

ぐあっ!


チョウ

ロジーをいじめるな!


トリカブト

てめぇ!(チョウを海へと投げる)


チョウ

うわぁっ!(海に落ちる)


ロジー

チョウ!(海へ飛び込もうと駆け寄るもトリカブトに押さえつけられる)っ!離して!


トリカブト

つけあがるな!


リオン

はあっ!(ナイフ(カトラス)を手にトリカブトに襲いかかる)


トリカブト

っ!(反射的に身を避け後退る)


リオン

女に手を挙げるとは、随分弱っちぃ真似してんじゃねぇか。トリカブトさんよ。


トリカブト

お前…


ロジー

チョウ!(海へと飛び込む)


リオン

…お前、チョウに何をした?


トリカブト

チョウ?アベルは俺のモノだ。俺が俺のモノを好きにして何が悪い。


リオン

アベル?誰のことだ。


トリカブト

アイツだ。アベルは俺とエルダの子だ。


リオン

っ!てめぇ!!


トリカブト

はははははは!残念だったな小僧。俺が全て手に入れた。


リオン

はああ!(ナイフを振り上げる)


トリカブト

ふんっ!(短剣を抜き受け止める)


リオン

(刃を合わせたまま)くっそ、が


トリカブト

強いものが全てを手にする。それがこの世の理だ!


 

トリカブトが短剣を振るう。合わさった刃が離れる。リオン、間合いを取る。


リオン

奪うことが、お前の強さだって言うのか。


トリカブト

そうだ。守れないのは、お前の弱さだ。


リオン

そんなのが強さだって言うなら、こっちからお断りだ。俺は俺の力で、大切なものを守る!


トリカブト

やれるもんならやってみろ!


 

リオンがナイフを振り上げトリカブトに向かう。


 

海。


ロジー

(海面から顔を出す)ぷはっ!はぁっはぁっ…


チョウ

(ロジーに掴まって顔を出す)はぁっ!はぁっげほっ…


 

二人とも息を荒げながら岸に上がる。


リオン

がっ!


 

トリカブトにやられたリオンが倒れる。


ロジー

っ…!リオン!


トリカブト

終わりだ!(短剣を振り上げる)


チョウ

やめろおおお!!


 

乾いた銃声。


 

鉛玉がトリカブトの右目を貫く。


 

ピストルを構えたアコニの姿。


トリカブト

がっ!あああっ!ってぇ…いてぇ!(血が溢れる右目を抑え)アコニ…てめぇ。


アコニ

終わりだ。


トリカブト

ふざけた真似してんじぇねぇぞ。お前は、俺を守る立場だろう!


アコニ

お前は此処で死ぬんだ。


トリカブト

戯言だ!お前は俺を殺せない。消えない傷!断ち切れない絆だ!そうだろ!兄弟!!


ロジー

ふんっ!(トリカブトを背からしがみつき押さえつける)


トリカブト

ぐっ!離せぇ!


ロジー

撃って!アコニ!


アコニ

さようなら。兄弟。


トリカブト

アコニいいいい!!!


 

響く銃声。


 

アコニの撃った銃弾がトリカブトの胸を貫く。


トリカブト

ぐっ…がはっ!こうなりゃ、道連れだ。(よろめきロジーを道連れに海へ落ちようと)


ロジー

きゃっ!


リオン

させるかっ!(ロジーの手を引き抱き寄せ)


トリカブト

っ、くそが


 

一人海に落ちるトリカブト。


 

静かに波の音だけがする。


アコニ

チョウ。怖い思いをさせたな。


チョウ

俺は大丈夫だよ。


ロジー

無事でよかった。


チョウ

あの人は、死んじゃったの?


リオン

悪い奴は俺たちがやっつけた。心配するな。


チョウ

そっか。


エルダ

(花の香りと共に風に乗り)アベル。


チョウ

え?


リオン

どうした?


チョウ

今、女の人の声が聞こえた。


リオン

声?


 

花の香りを乗せた風が4人の間に流れる。


アコニ

…花の香り。


ロジー

一体どこから。


チョウ

あっちだ!(走り出して)


ロジー

あっ!チョウ!


 

花の香りを辿り向かう4人。


 

トリカブト船、一室から花の香りがする。


チョウ

ここだ!ここから香りがする。


リオン

ここは、トリカブト船の…


アコニ

隠し扉…こんなものが。


リオン

開けよう。


 

ゆっくりと重い扉が開く。


 

中には沢山の宝石。その中に横たわる女性の白骨死体。


 

息を呑む三人。


ロジー

っ…!


チョウ

これは…誰の骨?


リオン

エルダ…


ロジー

うっ…ああ!(その場に泣き崩れ)エルダ。ごめんさい…ごめんなさい。


アコニ

こんなに近くにいたのか。


チョウ

この人が…


エルダ

アベル。


リオン

ちゃんと、居場所を教えてくれたんだな。


エルダ

リオン。


アコニ

見つけるのが、随分と遅くなってしまった。


エルダ

アコニ。


ロジー

帰ってきてくれて、ありがとう。


エルダ

ロジー。


ロジー

…おかえりなさい。エルダ。


エルダ

…ただいま。


 

数日後。港。


 

トリカブト船、出航の準備。


リオン

行くのか。


アコニ

ああ。


リオン

トリカブトは死んだし、エルダは見つかった。お前がもう、この船にいる必要はないだろ。


アコニ

そうはいかない。


リオン

どうして。


アコニ

副船長だったからな。次の船長は俺だ。


リオン

悪名高いトリカブト船だぞ。


アコニ

それでも、海には守るものがたくさんある。海賊は、海の番人だ。先代とは違う、俺のやり方で守っていきたい。


リオン

…ったく。しょうがねぇな。(船に乗り込もうと)


アコニ

おい。


リオン

一緒に行ってやるよ。


アコニ

決まった旅は窮屈で嫌いだろう。


リオン

ああ。風の向くまま気の向くまま。それが俺の旅だ。


アコニ

海賊には向かないな。


リオン

でも、お前には俺が必要だろう。なぁ、兄弟。


アコニ

っ…!


リオン

違うか?


アコニ

…いや。力になってくれ。


リオン

もちろん。


チョウ

おーい!アコニー!リオンー!


ロジー

もう行くの?


アコニ

ああ。出航の準備が整ったからな。


ロジー

もう少しゆっくりしていけばいいのに。


アコニ

また来るさ。


チョウ

リオンも一緒に行くの?


リオン

ああ。でっかい船の旅も、悪くないと思ってな。


チョウ

じゃあ二人に、これ。


リオン

花束…くれるのか?


チョウ

うん。忘れないでね。


リオン

忘れるもんか。ありがとうな、チョウ。


ロジー

二人なら大丈夫。いってらっしゃい。


チョウ

いってらっしゃい!


リオン

いってきます。


アコニ

さぁ、出航だ!


 

大きな汽笛の音。


 

二人を乗せた海賊船が出航。


 

見送るロジーとチョウ。


 

花の香りを乗せた風が陸と海に吹く。


 

【END】

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