メタ、パロディなんでもありな平成時代のファンタジー風ギャグ作品の続きの続きです。
タイトル
銀翼亭ファンタジーライフそのさん!
作者
島嶋徹虎
ジャンル
ギャグ、コメディ、ファンタジー
上演時間
約25~30分
男女比
男3:女1:不問1(※あくまで目安です)
ルクス
【♂】《銀翼亭》の店長。その正体は国王。バカ。
クロード
【不問(少年声推奨)】《銀翼亭》のアルバイトで魔術師見習いの少年。このお話の唯一の良心。
シズリース
【♀】《銀翼亭》の常連客。その正体は王国の近衛騎士団長。隙あらばルクスを蹴ったり殴ったりしているが、愛情表現の裏返し的な何かかもしれない。平成時代の過剰なツンデレヒロイン系お姉さん。
アルフレート
【♂】紋章を宿す勇者。重度の足フェチな変態。
ジークフリート
【♂】勇者アルフレートの幼馴染にして宿命のライバル。シンプルにドMな変態。
(※「」で括られてない箇所はナレーションもしくはモノローグとしてお読みください)
クロード
(N)ここは、冒険者たちが集う宿屋兼酒場《銀翼亭》。大陸の中でも屈指の交通の要衝となっているこの国には、まだ見ぬ旅の仲間を求めて、世界中からたくさんの冒険者たちが訪れます。
クロード
(N)先日、魔王を封印する力を秘めた《紋章の勇者》を騙る詐欺が頻発し、社会問題になっていることから、本物の勇者とそうでない者を判別できるという《聖なる鏡》を求めて、僕たちは《試練の塔》を訪れました。
クロード
(N)そこで《聖なる鏡》を手に入れたのは良かったのですが、いろいろと頭の痛い問題がまた次々と発覚するのでした……。
ルクス
「いやー、しかし、まさかリディアも勇者だったとはねー」
シズリース
「そうね。まあ驚いたけど、本物の勇者が増えるのは喜ばしいことだわ」
クロード
「勇者っていうか、変態ですけどね」
ルクス
「それにフローレンちゃんも勇者だったなんてねー」
シズリース
「あの子もかなりの魔術の使い手だっただけに、パーティメンバーに入れられなかったのは惜しいわね」
ルクス
「まあ、試練の塔の番人っていう役目があるし、あの場を離れられないのは仕方ないよねー」
クロード
「どうせ変態ですけどね」
アルフレート
「――こんにちは、みなさん」
ルクス
「お、いらっしゃい、アルフレートくん」
クロード
「出ましたね元祖変態」
アルフレート
「誰が変態ですか。私はおシズさんの素晴らしいおみあ……もとい、素晴らしいお人柄に感服したまでのことです」
シズリース
「はいはい、そういうの良いから。……ところで、リディアはどこに行ったわけ?」
アルフレート
「彼女は枠の都合でお休みです」
クロード
「だから枠の都合って何ですか」
ルクス
「なんとかコネの時だったら演者五人制限あったけど、今なら別に人数制限しなくてよくない?」
クロード
「おい何言ってんだ馬鹿やめろ」
シズリース
「だって六人とか七人とかやたらと登場人物増やしたら、話をまとめるの大変でしょ。それに、良い感じの時間に収めようとしたら、一人当たりの台詞数だって少なくしないといけないし、相対的にあたしたちの出番だって減っちゃうじゃない」
クロード
「そういうメタ発言やめろつってんですよ⁉」
ジークフリート
「……失礼する」
クロード
「あ! 新しいお客さん! いらっしゃいませー!」
アルフレート
「ん? ……お前は!」
ジークフリート
「見つけたぞ、アルフレート」
クロード
「アルフレートさんのお知り合いですか?」
アルフレート
「ええ。あいつは俺の幼馴染にして、宿命のライバル。――人呼んで、魔剣士ジークフリート!」
ジークフリート
「フッ……そして、勇者でもある!」
アルフレート
「なんだと? お前が、勇者⁉」
ルクス
「おお! 新たな勇者候補か⁉」
クロード
「……それとも、もしかして勇者詐欺?」
シズリース
「ああもう、こういう時こそ《聖なる鏡》の出番でしょ⁉ アンタどこにやったのよ!」
ルクス
「あれー……どこに仕舞ったんだっけなぁ……? おかしいなぁ……」
クロード
「いやあれ変態判別機ですしどうせ役に立たないですしおすし」
ジークフリート
「フン……そんなものは必要ありません。――何故なら、紋章は此処にあるからだ!」
――ジークが手を振り挙げると、その手の甲から紋章が浮かび上がる。
ルクス
「おお! あれはまさしく本物の紋章!」
アルフレート
「ジーク……お前も《紋章の勇者》に覚醒していたとは」
ジークフリート
「ひと足先に故郷を発った貴様に遅れは取ったが、これでようやく追いついたぞ、アルフ。そしてここからは、私が貴様を追い抜く番だ!」
クロード
「あーこれ絶対また新しい変態登場のパターンじゃーん」
シズリース
「早くも諦めモードになっちゃダメよクロードくん! あなたのツッコミだけが頼りなんだから!」
ジークフリート
「――さあ、私と勝負しろ、アルフ!」
アルフレート
「勝負だと?」
ジークフリート
「そうだ! 貴様に勝って、私が真の勇者であることを証明してくれる!」
ルクス
「お! これは面白い展開になってきたね」
アルフレート
「良いだろう。どんな試練をも乗り越えてこそ本当の勇者だ。俺が勇者たるためには、お前に負けるわけにはいかない!」
ルクス
「というわけで、第一回どちらが真の勇者にふさわしいか選手権~。ドンドンドンぱふぱふー」
クロード
「でも、何で勝負するんです? やっぱりお二人とも剣士だから、木刀を使っての模擬戦とか?」
ジークフリート
「フッ……そんな生ぬるいものではありません。これは私とヤツとの真剣勝負です」
シズリース
「まさかガチもんの決闘するつもり? やめてよね、お店の中あんたたちの血とか臓物とかで汚れたら迷惑じゃない」
クロード
「急に物騒なこと言い出すなこの人……」
アルフレート
「心配はいりませんよ、おシズさん。俺たちの勝負と言えば、昔から決まっています」
ジークフリート
「ああ、そうだな。貴様と私は、幼少の頃から互いに腕を競い合っていた仲だ」
アルフレート
「お前とこうして手合わせするのもひさしぶりだな。昔のように負けて泣きべそをかくなよ、ジークフリート!」
ジークフリート
「フン。貴様のその減らず口ごと、この手で叩き潰してくれる!」
クロード
「す、すごい気迫だ……一体、何が始まるんだ……⁉」
アルフレート
「今こそバトルだ! ――この、《ベイブレイブ》で!」
クロード
「は?」
ジークフリート
「行くぞ!」
アルフレート
「スリー!」
ジークフリート
「トゥー!」
アルフレート
「ワン!」
アルフレート
「(同時に)ゴォォォォシュウウウウウッッッ!」
ジークフリート
「(同時に)ゴォォォォシュウウウウウッッッ!」
クロード
「何やってんのこの人たちー⁉」
アルフレート
「うおおおおッ! いけえええ! 《スターバースト・ドラグーン》!」
ジークフリート
「そこだ! 吹っ飛ばせッ! 《シャイニング・フェニックス》!」
シズリース
「これは、かつて世の少年たちを熱狂の渦に巻き込んだといわれる《闘技独楽(ベイブレイブ)》……!」
クロード
「知ってるんですか、おシズさん?」
シズリース
「まあね。小学生時代にそこのバカがハマってたのを隣で見てただけだけど」
アルフレート
「くっ、初戦は引き分けか……なかなかやるなジーク」
ジークフリート
「フン。貴様も腕は衰えていないようだな、アルフ」
ルクス
「ああもう! お前ら楽しそうだなッ! 私も混ぜろ!」
アルフレート
「店長殿⁉ あなたも《ブレイバー》だったのですか!」
ルクス
「その通り! ――見よ! これが私の愛機だッ!」
ジークフリート
「あ、あれはッ! まさか、《ギャラクティカ・エンペラー》⁉」
アルフレート
「なッ⁉ ワールドカップ優勝者にしか与えられないという、あの伝説の⁉」
ルクス
「わーっはっはっは! 初代ワールドチャンピオンの実力を思い知るが良い!」
クロード
「……もしかしてそれ、金にモノを言わせて高額転売品を買ったとかじゃないですよね?」
シズリース
「だとしたら金輪際絶交よアンタ。転売ヤーもクズだけど、それを買ってイキってるヤツも同罪だかんね」
ルクス
「まってまって! 違うから! これほら! 大会優勝した時の賞状! ね⁉ 私の名前書いてるでしょ⁉」
クロード
「……確かに書いてますね。名前ちゃんと書き切れなくて、最後のほうめっちゃ小っちゃくなってますけど」
シズリース
「こいつの本名については『銀翼亭』の第一話を参照ね」
ルクス
「流れるような宣伝どうもありがとう!」
クロード
「でも、それって三人でできるやつなんですか?」
アルフレート
「ええ、できますよ。ただ、三人対戦用のスタジアムが必要ですが……」
ジークフリート
「あ、私、持ってきてるぞ」
シズリース
「持ってきてるんかい!」
クロード
「用意周到だな⁉」
ルクス
「よーしじゃあ、さっそくバトルだ!」
アルフレート
「はい! では、参りましょう。……スリー!」
ジークフリート
「トゥー!」
ルクス
「ワン!」
アルフレート
「(同時に)ゴォォォォシュウウウウウッッッ!」
ジークフリート
「(同時に)ゴォォォォシュウウウウウッッッ!」
ルクス
「(同時に)ゴォォォォシュウウウウウッッッ!」
ルクス
「――ぬわー⁉ 私の《ギャラクティカ・エンペラー》がーーーッ!」
クロード
「瞬殺だー⁉」
シズリース
「ちょっと、何がワールドチャンピオンよ! ただのクソ雑魚じゃない!」
アルフレート
「……しまった! 店長殿に巻き込まれて、俺の《スターバースト・ドラグーン》も……ッ!」
ジークフリート
「フハハハハッ! やはり私の《シャイニング・フェニックス》が最強と言うことだなッ!」
クロード
「良い大人がそんなんで勝ち誇るのやめてもらっていいですか?」
アルフレート
「だが、遊びはこれまでだ。次こそ本気の《決闘(デュエル)》と行こうじゃないか」
ジークフリート
「フッ……望むところだ」
アルフレート
「俺の全身全霊を注いで、お前を倒す――ジークフリート!」
ジークフリート
「返り討ちにしてやる。吠え面をかくなよ、アルフレート!」
クロード
「す、すごい、さっき以上の気迫だ……ッ!」
アルフレート
「さあ、《決闘(デュエル)》だ! この《鳥獣戯画TCG》で!」
クロード
「はいはい、《決闘(デュエル)》ってそっちね! いや流れ的に薄々わかってたけど!」
シズリース
「なによそのウサギとカエルが戦うみたいなネーミングのカードゲーム! しかも、元ネタのタイトルと『戯』しか合ってないじゃない! もうちょっと寄せる努力をしなさいよ!」
クロード
「そういう問題じゃないですおシズさん!」
ルクス
「《鳥獣戯画TCG》だって⁉ それこそ私の十八番(オハコ)じゃないか!」
アルフレート
「おお、店長殿も《決闘者(デュエリスト)》だったのですね!」
ルクス
「あたぼうよ! ――見るがいい! これが真の王者の証だ!」
ジークフリート
「あれは! 世界大会の優勝者にしか与えられない伝説のプロモカード⁉」
シズリース
「アンタどんだけ大会荒らしてんのよ!」
クロード
「王様だからって忖度してもらってるんじゃないですかぁ?」
ルクス
「違うからね⁉ ちゃんと実力で勝ち取ったものだからね⁉ ……ねえ、信じて⁉」
アルフレート
「ですが店長殿、《鳥獣戯画TCG》は二人対戦用ですし、これは俺たちの勝負なので……」
ルクス
「ぐ、ぐぬぬ……仕方ない……(泣きそうになりながら)あとで私とも《決闘(デュエル)》してくれよな……っ!」
クロード
「そんな涙目で言わなくても」
シズリース
「どんだけ遊びたかったのよアンタ」
ジークフリート
「――さあ、手札を引け、アルフ。先攻は貴様だ!」
アルフレート
「わかった。では、まずは俺のターン。初期手札は……っと。
まあ、こんなものか。それでは、場にカードをセットしてターンエンドだ」
ジークフリート
「フッ。それで終わりか? ならば――私のターン、ドロー!」
アルフレート
「昔からジークの引きの強さは半端じゃなかった……下手をすれば、次のターンで勝敗が決してしまう可能性もある……はたして、どう来る……?」
ジークフリート
「ふ、ふふふ……」
アルフレート
「な、何がおかしい……?」
ジークフリート
「ハーハハハハッ! 悪いな、アルフ! この勝負、私が貰ったッ! ――出でよ、《ブルー・アイズ・ホワイト・ラビット》ッ!」
クロード
「あ、そこはちゃんと鳥獣戯画らしくウサギなんだ」
ルクス
「《ブルー・アイズ・ホワイト・ラビット》だって⁉ 世界に数枚しかないと言われる、超絶ウルトラレアカードじゃないか! 私も持ってるけど!」
シズリース
「それこそ金にモノを言わせてゲットしたやつでしょ!」
クロード
「まったくこれだから王様ってやつは!」
ジークフリート
「ふははは! スゴイぞー! カッコいいぞー!」
アルフレート
「あ、じゃあ、トラップカード発動で。《ブルー・アイズ・ホワイト・ラビット》に十の十乗ダメージです」
ジークフリート
「えっ……あっ、は、はい……」
アルフレート
「カウンターとかあります?」
ジークフリート
「いえ、ないです……」
アルフレート
「そしたら墓地送りですね。ターンエンドでよろしいですか?」
ジークフリート
「はい、大丈夫です……っていうか、あの、投了します……」
アルフレート
「…………」
ジークフリート
「…………」
アルフレート
「――勝ったッ!」
ジークフリート
「くそおおおおッ!」
クロード
「ほんと何してんのこの人たち⁉」
アルフレート
「なにはともあれ、これで一勝一敗だな」
ジークフリート
「ぐうう……ならば、次はあれで勝負だ……ッ‼」
クロード
(N)そんなこんなで、二人の勝負はまさに手を替え品を替え、ボードゲームしたりカードゲームしたり、ヨーヨーしたりビー玉飛ばしたり、果てはレースゲームだったり格闘ゲームだったり、育てたモンスターでバトルしたり、イカとタコがインクで塗り合ったり、なぜか僕らも付き合わされたりとかして続いていきました。
シズリース
「……まあ、意外とやってみると楽しいわね」
クロード
「悔しいけど、ちょっと否定できない……」
ルクス
「でしょでしょー! また今度みんなで遊ぼうぜー!」
クロード
「いやでも、楽しかったのは良いんですけど、アルフレートさんとジークフリートさんの勝負は、結局どうなったんですか?」
アルフレート
「――ハッ⁉ そう言えばッ!」
ジークフリート
「……くっ、これでは埒が明かない! やはり最後は、剣で決着をつけるしかないようだな」
アルフレート
「やはり、これも剣士たる者の性(さが)というわけか……わかった。では、表に出ろ。ここでは店に迷惑がかかる」
クロード
「えっ⁉ ほ、本当にやるんですか⁉」
ジークフリート
「無論。そうでなければ、私の気が収まらん」
アルフレート
「……こうなることは、俺とお前の運命(さだめ)だったのだろう」
シズリース
「どうやら、二人とも覚悟が決まっているようね。――いいわ。そこまで言うなら、見届けさせてもらおうじゃない」
クロード
「おシズさん⁉」
ルクス
「これは彼らのプライドをかけた闘いだ。外野の私たちが割って入っていけるものじゃないさ」
クロード
「そ、そんな、店長まで……」
アルフレート
「……最初から全力で行かせてもらう」
ジークフリート
「……ならば、こちらも全力で応えよう」
クロード
「こ、このゾッとするような殺気……二人とも、本気で……っ!」
アルフレート
「我が敵を貫け、星の聖剣――」
ジークフリート
「すべてを灰燼に帰せ、輝きの魔剣――」
アルフレート
「星衝・竜皇剣(スターバースト・ドラグーン)ッ!」
ジークフリート
「輝煌・鳳凰刃(シャイニング・フェニックス)ッ!」
クロード
「――って、さっきの《ベイブレイブ》の名前、あんたらの必殺技だったんかい! しかもちゃっかり当て字までしちゃってサァ! 聞いてる人には見えないからねそれ⁉」
アルフレート
「うおおおッ! 最強無敵究極ビぃぃぃムっ! これ喰らったら死ぬー!」
ジークフリート
「はあああッ! 絶対効かないバリアーっ! 無効化したから死にませーん!」
クロード
「す、すごい! 二人が放った必殺技のエネルギーがぶつかり合って……言動は小学生並みの酷さなのにッ!」
アルフレート
「くっ、まずいっ! 弾かれた衝撃波が群衆のほうに……ッ! ――間に合え!」
クロード
「あ! アルフレートさんが人々の盾に!」
ジークフリート
「戦いの最中に敵に背を向けるとは愚かなッ!」
アルフレート
「……くっ!」
ジークフリート
「もらったぞアルフレート! 恨むなら貴様の浅はかさを恨むが良い!」
――そこへシズリースが立ちふさがる
シズリース
「――そこまでよ!」
クロード
「おシズさん!」
ジークフリート
「な、なぜ止めるのです⁉ 私の邪魔をするというのであれば、たとえ貴女でも――」
――パンッ! ジークフリートの頬にシズリースが平手打ちする
ジークフリート
「……ッ!」
シズリース
「アンタねぇ! アルフレートが今、なにをしたのか見てなかったの⁉ 自分の身を挺して街の人を守ったのよ! 自分たちが放った攻撃に巻き込ませないためにね! 目先の勝負にとらわれて周りが見えなくなってたアンタより、勝負を捨ててでも守るべきものをしっかり見ていたアルフレートこそ本当の勇者よ! いくら剣の腕が良くたって、そんなこともわからないなら、アンタに勇者の資格はないわ!」
アルフレート
「おシズさん……」
ジークフリート
「とぅんく」
シズリース
「ん? 今なんか、とぅんくって聞こえた?」
――すごい勢いでジャンピング土下座するジークフリート
ジークフリート
「くっ……誠に申し訳ございません……シズリース様……私が、間違っておりました……ッ!」
シズリース
「……ま、まあ、わかればいいんだけどさ?」
――さらにシズリースに詰め寄るジークフリート
ジークフリート
「貴女の誠実さ、気高さ、そして気丈さ! 私は……私は、心の底から感服いたしました! 確かに私は、本当に愚かなことをしてしまいました……ですから、どうか私めに罰をお与えくださいッ!」
シズリース
「えっ、ええぇ……ば、罰って言われても……」
ジークフリート
「さあ、まずはこの鞭をお持ち頂いて」
シズリース
「これを? 持って?」
ジークフリート
「そう、そして私の背中に思いっきり振ってください」
シズリース
「こうやって振れば良いのね?」
――ビシィッ! 鞭でしばかれるジークフリート
ジークフリート
「あぁんッ! ありがとうございますッ!」
シズリース
「いやいや、何をやらせとんじゃいっ⁉」
ルクス
「なるほど。どうやらジークフリートくんは真性のドMのようだね」
クロード
「要するにシンプルに変態ってことですね」
ジークフリート
「シズリース様、どうかもう一度! いえ、二度、三度と気が済むまで私にその鞭を振るってくださいッ!」
シズリース
「いや、あのね、あたし別にそういう趣味は……」
ルクス
「普段から人を蹴ったり殴ったり虐待して楽しんでるおシズちゃんにはお似合いじゃね?」
シズリース
「――お前は黙っとれッッッ‼」
ルクス
「(殴られて)んぎゃあああ⁉」
ジークフリート
「あ、ああ……なんと、なんと羨ましい……ッ!」
クロード
「恍惚の表情をするな」
アルフレート
「くっ、俺もおシズさんの脚で三角締めとかされたい!」
クロード
「あんたも乗ってくるんじゃないよ!」
ジークフリート
「……アルフ。シズリース様に免じて、今日のところは私が退こう」
アルフレート
「ジーク……」
ジークフリート
「だが、勘違いするなよ。私は決して貴様に負けたとは思わん。私は心を入れ替えて、必ずやまた貴様の前に帰ってくると誓う」
アルフレート
「ああ、わかった。待っているぞ、ジークフリート」
* * * * *
――翌日
アルフレート
「――こんにちは、みなさん」
クロード
「あ、いらっしゃいませ、アルフレートさん!」
ルクス
「おや、今日も一人かい?」
アルフレート
「ええ。リディアは引き続き枠の都合で」
シズリース
「まあ、そりゃそうよね。こんな終盤でいまさら出てきたって、台詞も数える程度だろうし」
クロード
「だからそういうのやめろつってんですよ!」
ルクス
「いやあ、しかし昨日は大変だったね、アルフレートくん」
アルフレート
「そうですね。しかし、あいつは俺の宿命のライバル……きっとまた、近いうちに俺の前に現れるに違いありません」
ジークフリート
「――失礼する!」
アルフレート
「って、言ってるそばからジークフリート⁉」
クロード
「今日も来たんですか⁉」
シズリース
「いや、いくら何でも近いうち過ぎるでしょ⁉ っていうか、心を入れ替えてからまた来るって言ってなかった?」
ジークフリート
「ええ! ええ! 入れ替えましたとも! 貴女の平手打ちのおかげで、私は目が覚めたのです!」
シズリース
「アンタねぇ、たった一晩くらいでそんな変わるワケ――」
ジークフリート
「――シズリース様! 信じてくださいなどと、おこがましいことは申しません。いえ、信じてくださらなくたって構わない! ですが! 私のこの思いだけは、嘘偽りのない本物です! 私は貴女がお望みのままに、この身をすべて捧げると誓いましょう!」
シズリース
「はああああ⁉」
アルフレート
「待てジーク! おシズさんが困っているだろう!」
ジークフリート
「貴様に用はない! 今日はシズリース様にお会いしに来たのだ!」
アルフレート
「おシズさんのおみあしは俺のものだ! お前なんかに渡すものか!」
シズリース
「別にアンタのもんでもないかんね⁉」
ジークフリート
「シズリース様! 何卒この私めを、足蹴にしてください!」
アルフレート
「いいえ、おシズさん! どうぞこの俺を! この俺を足蹴に!」
ルクス
「やったね、おシズちゃん。モテ期到来じゃん?」
シズリース
「こんなんにモテても嬉しかないわッ⁉」
クロード
「まあ、常日頃から『あたしの言うこと何でも聞いて貢いでくれる優秀な下僕が欲しいわ~』って言ってましたし、ちょうど良いんじゃないですかね?」
シズリース
「ちょっと、クロードくんッ⁉」
ジークフリート
「嗚呼、シズリース様! どうか私を思う存分、ぶってなぶっていたぶって!」
アルフレート
「おシズさん、俺を踵で踏んづけてください! さあ、思いっきりぐりぐりと!」
シズリース
「ああもう、いい加減こいつらなんとかしてよおおおお⁉」
《おしまい》

