銀翼亭ファンタジーライフそのに!

コメディ
コメディシナリオファンタジー

 メタ、パロディなんでもありのファンタジー風ギャグ作品の続きです。

はじめにお読みください

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  • このお話だけでもお楽しみいただけますが、キャラクターの関係性などについては前作をお読みいただけますと幸いです。
作品概要

タイトル

銀翼亭ファンタジーライフそのに!

作者

島嶋徹虎

ジャンル

ギャグ、コメディ、ファンタジー

上演時間

約30分

男女比

男1:女2:不問2(※あくまで目安です)

登場人物

ルクス

【♂】《銀翼亭》の店長。その正体は国王。バカ。


クロード

【不問(少年声推奨)】クロード・ランドール。14歳。《銀翼亭》のバイトで魔術師見習いの少年。このお話の唯一の良心。


シズリース

【♀】シズリース・フォン・カルメリア。《銀翼亭》常連の女騎士。その正体は近衛騎士団長。隙あらばルクスを亡き者にしようとするが愛情表現的な何かかもしれない。平成時代の過剰なツンデレヒロイン系お姉さん。


リディア

【♀】勇者アルフレートのパーティメンバーである女魔術師。物腰柔らかでせくしーな雰囲気を醸し出すが、ロリショタが大好物な変態。


フローレン

【不問】試練の塔の番人。重度の声フェチな変態。

シナリオ

(※「」で括られてない箇所はナレーションもしくはモノローグとしてお読みください)


クロード

ここは、冒険者たちが集う宿屋兼酒場 《銀翼亭》。大陸の中でも屈指の交通の要衝となっているこの国には、まだ見ぬ旅の仲間を求めて、世界中からたくさんの冒険者たちが訪れます。


クロード

実は先日、魔王を封印するための力の証であるという〝紋章〟を身体に宿す者――〝勇者〟のパーティが来店しました。


クロード

しかし、当初はこの《銀翼亭》に訪れた剣士、アルフレートさんだけかと思われていましたが、人数は非常に少ないながらも、世界各地で紋章を持つ〝勇者〟が現れ始めたというのです。


クロード

ところが、近頃はなにやら、そのことが問題となっているようで……


シズリース

「ねえ、聞いた? まーた勇者詐欺の被害が出たらしいわよ」


ルクス

「いやー、いい感じに社会問題になってきてるねー」


クロード

「え? ゆ、勇者詐欺って、なんですか……?」


シズリース

「あら? クロードくん、知らない? 新手の詐欺よ」


クロード

「新手の詐欺⁉」


シズリース

「そ。最近、なにやら各地で勇者が現れ始めたじゃない? それに便乗した野郎共が自分も勇者だと詐称して、行く先々で金品をねだったり、酒場でタダ飯食らったり、民家のタンスを勝手に開けて薬草だの小さなメダルだのを持ち逃げしてくっていう事案も増え始めてて、ちょっとした社会問題になってるのよ」


ルクス

「いやーほんと大変だよねー」


シズリース

「他人事か!」


ルクス

「え? なに、ごめん、魔王院マオちゃんの配信見てて聞いてなかった」


シズリース

「――政府の! 対応が! 遅れてるって! 国民からの批判が噴出しまっくってんのよ‼」


ルクス

「いいいいい痛い痛い痛いおシズちゃん耳引っ張んないで⁉」


リディア

「――皆様、ごきげんよう」


クロード

「あ、いらっしゃいませ!」


シズリース

「あら、リディアじゃない」


ルクス

「おや、今日はアルフレートは一緒じゃないのかい?」


リディア

「彼は枠の都合でお休みですわ」


シズリース

「枠の都合ってなによ」


クロード

「まあ、アルフレートさんもパーティメンバー探しに忙しいでしょうし」


シズリース

「とか言って、どうせまた脚線美がどうのこうのって、そこらの女戦士ナンパしまくってんじゃないの?」


クロード

「普通にありえる……」


リディア

「彼の場合、そこにすべてを賭けてる感はございますわね」


シズリース

「そういうリディアも、いたいけな少年少女たぶらかしてたりしないわよね?」


リディア

「まあ! たぶらかすだなんて人聞きの悪い。わたくし、そこまであさましくはございませんわよ。ちょっとばかり目の保養にと、遠目に眺めながら多幸感に浸っているだけですわ!」


クロード

「そこは相変わらずですね……」


リディア

「YESロリショタ、NOタッチの精神ですわ! ……ところで皆様、今日は何のお話をなさっておられたのです?」


シズリース

「あ、そうそう。最近、勇者詐欺が流行ってるじゃない?」


リディア

「勇者詐欺……確かに、近頃よく耳にしますわね。まったく不届きな輩が増えてきましたこと」


シズリース

「でしょう? だからリディアも、正式な勇者パーティの一員として、注意喚起に努めてほしいのよ」


リディア

「なるほど。でしたら、ここから南にある、《試練の塔》を訪れてみてはいかがでしょう?」


シズリース

「試練の塔?」


リディア

「ええ。噂によると、本物の勇者とそうでない者を見分けることができる、《聖なる鏡》というアイテムが眠っているのだとか」


クロード

「えっ、そんな便利なアイテムがあるんですか⁉」


ルクス

「これぞ昔ながらのRPG的なご都合展開!」


シズリース

「みなまで言うんじゃないわよ! ……とはいえ、それで本物と偽物を判別できるとなれば、なかなか便利じゃない。そうと決まれば善は急げね! ほら、ルクえもん! さっさと転移魔法、転移魔法!」


ルクス

「(あの声のモノマネで)もう、しょうがないなぁ、シズ太くんは。はい、どこでも転移門扉ゲートぉ~!」


クロード

「ほんと、なんだかんだ仲良いんだよなぁ、この二人……」


 

   * * * * *


シズリース

「――で、着いたわけだけど」


クロード

「これが、試練の塔……?」


シズリース

「なんか人多くない?」


ルクス

「ほら、こういうところって古代に栄えた大魔法文明の遺跡だったりするからさ。古代の神々が祭られていて、世界各地から旅の巡礼者が集まってきてるんだよ。……って、あっ、やっべ、今日の『ドラ娘』のガチャ回してなかった!」


リディア

「どらむすめ?」


ルクス

「そう! 魔導端末用アプリでね、実在するレース用のドラゴンを擬人化&美少女化したキャラがいっぱい出てくる育成シミュレーションゲームなんだ!」


リディア

「時折、まともな考察をしたかと思えば、ルクスさんは相変わらずですわね……」


クロード

「うーん。でも、巡礼者にしてはなんだか……ちょっと普通の人たちっぽいような……?」


リディア

「それにしてもこの塔、まさに天を衝くほどに高く聳え立っていますわね……これを登りきるのは一苦労ですわ」


クロード

「た、確かに……塔の外壁に巻き付くように設置されているあの螺旋階段も、全部で何段あるかもわからないくらいですし、これが《試練の塔》と言われるゆえんなんでしょうか……」


シズリース

「あ、ねえねえ! あそこのエレベーターで昇れるみたいよ」


クロード

「――って、エレベーターあるんですか⁉」


シズリース

「うん、ほら、巡礼者の人たちも普通に使ってるし」


クロード

「……なんか思ってたのと違ぁう!」


シズリース

「まあ、とりあえず乗っちゃいましょ。人も多いし、けっこう待たされそうよ」


リディア

「確かにエレベーターはこの一基しかなさそうですし、上下を往復するだけでもそこそこ時間かかりそうですわね」


クロード

「あれ? そういえば店長は?」


ルクス

「ぐ、ぐぬぬ……150連回してSSR一人もこないとは……こうなったら、さらに石追加いっちゃうかー‼」


シズリース

「ったく、あいつ、あんなとこでまーたぽちぽちガチャ回してるわね」


クロード

「店長~? 乗らないんですか~?」


シズリース

「いいわよあんなやつ、置いてきましょ。ほら、さっさと閉めるボタン連打連打」


ルクス

「――えっ? あ! ちょ、待って待って、私も乗る! 乗りますぅ!」


 

――エレベータ内に駆け込むも、無慈悲に鳴り響くブザー音

ルクス

「え、えーと……」


リディア

「重量オーバーみたいですわね」


クロード

「まあ、これだけ人が乗り合わせてればそうなりますよね……」


シズリース

「じゃっ、そういうわけで! あたしたち先に上がってるから! あんたは階段で上がってらっしゃい!」


ルクス

「いやぁああ待って置いてかないでええええ!!!!」


 

   * * * * *


シズリース

「――で、着いたわけだけど……いや、人、おおッ⁉ なんでこんな観光地みたいになってんのよ⁉」


クロード

「こ、この人たちやっぱり、巡礼者じゃないですよね⁉」


リディア

「普通に家族連れとかもいますわね……あっ、あの子っ、か、か、可愛かわ……ッ」


シズリース

「ほら、これで拭きなさい、鼻血」


リディア

「か、かたじけのうございますわ……」


ルクス

「ふおおおおお……ッ‼」


クロード

「て、店長⁉」


リディア

「まさか、あの階段をもう上がってきましたの⁉」


ルクス

「ぜーはー……ぜーはー……お、王様の、脚力を、舐めん……なよ……ガクッ」


クロード

「あ、息絶えた」


ルクス

「いや、ま、まだ、私、生きてるから……! っていうか、置いてくなんてひどいじゃんか、おシズちゃん……っ!」


シズリース

「ふんっ、たまには良い運動になったでしょ」


フローレン

「――みなさま、ようこそいらっしゃいました。北の王国からお越しになられたルクス王陛下の御一行様でございますね?」


クロード

「えっ、どうしてそれを⁉」


フローレン

「みなさまがここを訪れることは、事前に予知魔法で把握していたのです」


クロード

「……あ、あなたは?」


フローレン

「本日みなさまのガイドを務めさせていただきます、試練の塔の番人ことフローレンと申します。お気軽に〝フローレンちゃん〟とでも呼んでください」


クロード

「え? なんて?」


フローレン

「ですから、フローレンちゃんです」


クロード

「……いや、ええと、いろいろ突っ込みたいところはいっぱいあるんですけど、その、ガイドっていうのは……」


フローレン

「そのままの意味ですよ。この試練の塔の成り立ちや、長きにわたる歴史、そして、その魅力を余すところなく、皆様にご案内差し上げているのです」


クロード

「つまり、ここって観光地なんですよね?」


フローレン

「違います。試練の塔です」


クロード

「は、はあ……」


フローレン

「今みなさんがいらっしゃるこちらは、試練の塔のメインフロアである展望室でございます。三六〇度の大パノラマを堪能できますよ」


ルクス

「観光地だね」


フローレン

「そして、あちらにはお土産屋さんが。キーホルダーとか記念メダルとか、名物の大福とかもご用意しています」


シズリース

「観光地よね」


フローレン

「さらに、上の階にはおしゃれなカフェも。オーガニックなコーヒーと砂糖不使用のスイーツが人気です」


リディア

「観光地ですわね」


フローレン

「むぅ。まったく失礼な。ここは由緒正しき試練の塔。決して観光地などではございません」


クロード

「どうみても観光地ですけど⁉」


フローレン

「まあ、確かに巷で人気のバえるパワースポットとして、女性ファッション誌で特集組まれるくらいには有名にはなりましたが」


シズリース

「なにしれっと女子ウケ狙ってんのよ」


フローレン

「最近では高齢化が進み、巡礼者の方々も少なくなってきましたからね。これからは流行の最先端にいる若い女性たちにこの場所の魅力を訴えかけ、新たな客層を取り込んでいかなければなりません。ま、言わば、わたしの営業努力の賜物と言ってください」


クロード

「……やっぱり観光地だ!」


フローレン

「ああ、そうそう、この展望台からは魔王城もよく見えますよ」


シズリース

「意外と近くにあるわね魔王城」


フローレン

「夜にはきらびやかなパレードが行われますし、花火も打ち上がります。とってもきれいですよ」


クロード

「何してんの魔王城⁉」


フローレン

「ほかにも人気アトラクションが目白押しで、一時間待ちとかざらにありますし。わたしも最近よく遊びに行くんですけどね」


クロード

「アトラクションとかもあるの⁉ ってか、遊びに行ってるの⁉」


フローレン

「年パスも持ってますよ」


クロード

「ヘビーユーザーだこの人⁉」


フローレン

「あと、最近は隠れ魔王ちゃんとか探すのハマってます」


クロード

「隠れ魔王ちゃん……?」


フローレン

「そうです。アトラクションや建物など、さまざまな場所に描かれていたり、レリーフになっていたり。アトラクションの順番待ちのときや、休憩時なんかに探してみるのもまた楽しいのです」


リディア

「なんだか、すごくどっかで聞いたような話ですわね」


シズリース

「ま、どうやらそれも、魔王による人間から富を吸い取る恐ろしい計画の一つらしいわ。魔王軍の幹部連中なんかも、ゆるキャラだったりイケメンキャラだったりで売り出そうとしてて、子どもや女子にも大人気。パーク内で握手したり写真撮ったり、グッズ販売なんかもしてるっぽいし」


クロード

「どんだけ商売上手なんだ魔王」


シズリース

「最近じゃ、映画スタジオ買収してコンテンツを独占したり、独自のサブスク配信で視聴者囲い込もうとしてるそうよ」


リディア

「本当にアコギな商売ですわね」


ルクス

「それ以上はやめろぉ! 甲高い声のネズミに目をつけられるぞぉ!」


フローレン

「(甲高い声で)ハハッ、おもしろい冗談だね」


クロード

「それ冗談じゃすまなくなるやつ!」


シズリース

「んーで、本物の勇者を判別する《聖なる鏡》ってのは?」


フローレン

「おや。みなさんは《聖なる鏡》を求めていらしたのですね。ですが、《聖なる鏡》を手に入れるためには、過酷な試練に臨まなくてはなりません」


ルクス

「あ、なるほど。だから試練の塔」


クロード

「ただの観光地じゃなかったんだ」


シズリース

「まあ、そのためにわざわざここまで来たんだし。何だか知らないけどやってやろうじゃないの」


フローレン

「ふむ。試練に臨むというのですね。……よろしい。では、さっそく参りましょう!

――出でよ! 《暗闇の女王の花冠ダークネス・ミストレス・ヘッドドレス》!」


ルクス

「なッ……こ、これは……ッ⁉」


クロード

「魔法陣からマネキンみたいな大きな黒い頭が召喚された……⁉」


フローレン

「これなるは試練の儀式に用いる魔法の祭具。その名も、《暗闇の女王の花冠ダークネス・ミストレス・ヘッドドレス》――略して、ダミヘッ‼」


クロード

「……ダミーヘッドマイクだそれー⁉」


フローレン

「違います。ダークネス・ミストレス・ヘッドドレスです」


リディア

「だーくねす、みすとれす、へっどどれす……?」


フローレン

「ええ。かつてこの地に君臨したといわれる伝説の《暗闇くらやみの女王》が、花冠はなかんむりを被った姿を模したアーティファクト。その耳元に向かって言葉を発すことで、このアーティファクトによる魔法効果の対象となった者は、あたかも本当に耳の近くで囁かれているかのように感じてしまうのです」


ルクス

「なんと! それはすごい魔法のアイテムだ! ASMRが捗るやつじゃないか!」


クロード

「だからそれダミーヘッドマイクですよね」


フローレン

「違います。ダークネス・ミストレス・ヘッドドレスです」


シズリース

「もういいわよそのくだり! 要するに、それに向かって何か言葉を言えってことでしょ!」


フローレン

「なかなか理解が早いですね。そう、みなさんにはこのダミヘに、私が用意したセリフを読み上げていただきます。しかし、当然ながら、ただ読むだけではいけません。しっかりと気持ちを込めることが大事ですよ。そして、みなさんが見事に読み終えることができたら、晴れてクリアとなるわけです」


シズリース

「なるほど。それが試練ってわけね。いいわよ、そんな試練なんかちゃちゃっと終わらしてやろうじゃない。さ、誰から行く?」


フローレン

「では、順番はわたしが指名しましょう。まずは――貴方! 読んでいただく台詞はこちらです!」


ルクス

「お、私かー。うーん、うまくできるかなぁ」


フローレン

「さあ、ではまいりましょう。……さん、に、いち、どうぞ!」


 


――これ以降、『』の劇中セリフは、可能であればエコーなど入れるとなお良しです。


ルクス

『ハァ……うるせえよ、キャンキャン吠えやがって。少し黙ってろ。(壁ドン)フン、放せだ? 放すわけねぇだろ。お前はもう、とっくに俺のもんなんだからな?(イケゔぉ)』


リディア

「まあ! 俺様系だなんて、ルクスさんたら!」


クロード

「すごい! ほ、ほんとに店長なんですか⁉」


シズリース

「……っとにこいつ、無駄に声だけは良いのよね……はらたつわー」


フローレン

「あぁ~(恍惚)、良いですよ良いですよぉ! そう! もっっと! 感情を込めてッッッ!」


クロード

「え、ちょっ、フローレンさん⁉」


フローレン

「ささ! 続いてはこちらをどうぞ!」


ルクス

『どうしたんだよ。そんな顔して。バーカ。いつでもそばにいてやるって言ったろ? ……ふっ、ほんと、カワイイやつだな(イケゔぉ)』


リディア

「うわー。ルクスさんてこういうのもイケるんですのね……普段とのギャップがまたえっぐいですわ!」


シズリース

「ん~~ッ、ぐぬぬ……!(なぜか悔しそうに)」


クロード

「おシズさん、どうしました?」


シズリース

「な、なんでもないわよ!」


フローレン

「くぅ~ッ! 普段は昼行燈的な青年がここぞとばかりに俺様キャラに変貌! これは罪の味ですねぇ!」


クロード

「って、フローレンさんの情緒がすごいことになってるんですけど⁉」


ルクス

「なるほど。フローレンちゃんは重度の声フェチというわけだね」


クロード

「(棒読みかつ一息で)要するに新たな変態現るってことですね把握しました」


リディア

「クロードくんが虚無の表情になっていますわ……!」


フローレン

「ふ、ふふ……まさか初っ端からこのクオリティとは恐れ入りました。どうやら、なかなかやるようですね……」


ルクス

「フローレンちゃんの足元、鼻血で血だまりできてるね」


リディア

「なんだかちょっとシンパシーを感じてしまいますわ」


フローレン

「しかし、試練はまだまだ始まったばかりです。さあ、続いては、そこの貴女!」


リディア

「わたくしでございますか? 承知いたしました」


フローレン

「では、こちらのセリフを読んでいただきましょう! どうぞ!」


リディア

『あら、どうしたの坊や。フフ、そんなにおびえなくて良いわよ。別にとって食おうだなんてわけじゃないんだから。……ただ、ちょっとだけ、アナタに興味があるの。ほら、遠慮なくこっちにいらっしゃい? お姉さんがたっぷりと、可愛がってあ、げ、る』


フローレン

「あぁ~いいですよぉ! ナイスですよぉ! 最高ですよぉ~~~‼」


ルクス

「さっすがリディア! これはもう十八番と言ってもいいね!」


シズリース

「なんか悔しいけど、リディアは本当にこういうの似合うわよねぇ」


ルクス

「まあ、この色気は、おシズちゃんには逆立ちしても真似できな……ごふぅ!(殴られ)」


シズリース

「なんか言ったぁ⁉」


ルクス

「だから聞く前に殴るのやめてください」


フローレン

「ではでは、この勢いでさらにこちらをどうぞ!」


リディア

『あっ、先輩っ! お疲れ様です! あの、これ……もし良かったら、私の手づくりで……。え? おいしい? ほんとですか! よかったぁ! ……あ、あの、明日の試合、頑張ってくださいね! わたし、先輩のこと、ずっと見守ってますから!』


クロード

「わっ、いつものリディアさんとまったく違うッ!」


シズリース

「ちょっ、ここで後輩キャラとか反則じゃない⁉」


フローレン

「うっひょぉ~‼ セクシー系からの清楚系に流れるこのギャップ力の高さ、たまりませんねぇっっ!」


ルクス

「おっ、フローレンちゃんは男女問わずイケる口か!」


フローレン

「もちろんです! 良い声に老若男女の別はありませんッ!」


クロード

「うん、もうお好きにどうぞって感じです」


シズリース

「クロードくんの心がどんどん荒んでってるわね」


フローレン

「さあ、どんどん行きますよ! お次はそこの君!」


クロード

「えー……僕もやらないとだめなんですか……?」


フローレン

「あったりめぇですとも! さ、君はこちらをどうぞ!」


クロード

『お姉ちゃん、外国に行っちゃうの……? そんなのやだよ、さびしいよ……っ! ぐすっ。また、ぜったいに会えるよね……? ほんと? 約束だよっ! ぼく、お姉ちゃんのこと、ずっと待ってるから……!』


フローレン

「ぐぼァ!」


リディア

「ぶはァ!」


シズリース

「ちょっと! 二人して鼻血吹き出さないでよ!」


ルクス

「外国へ留学に行ってしまう近所のお姉さんと、仲の良い男の子のシチュかぁ~! いやあ、これもクロードくんならではの魅力だね!」


リディア

「ああ、神様、ありがとうございますわ~~~今日というこの日に、生きとし生けるものすべてに感謝ですわ~~~」


フローレン

「わたしも耳からの幸せ注入で脳汁ドッバドバですッッ‼ ……では、お次のセリフまいりましょう!」


クロード

『――っと、危ないところだったね、お姉さん。もうちょっとで転んじゃうところだったよ。……え? 僕の顔にどこかで見覚えが? そりゃそうだよ、忘れちゃったの? 約束したでしょ、ずっと待ってるって。……おかえり、お姉ちゃん』


フローレン

「キターーーーッ‼ 160キロの剛速球がど真ん中に決まりましたよッ‼」


ルクス

「なんと! あの時の子が少し見ぬ間に立派に成長していた展開!」


シズリース

「これは一粒で二度おいしいやつね! やるじゃない、クロードくん」


リディア

「(息も絶え絶えに)は、ハァ、ハァ……て、てぇてぇ……」


ルクス

「あ! リディアが尊死とうとししかけてる!」


クロード

「そのまま昇天させてあげましょ(にっこり)」


シズリース

「クロードくんが黒い笑みを浮かべてるわ……!」


フローレン

「――さあ、そして、残るはそこの貴女です!」


シズリース

「む。あたしか。うーん、まあ、いいけど」


フローレン

「では、さっそく! こちらのセリフからどうぞ!」


シズリース

『はあ? その荷物一人で運ぶ気ぃ? 何日かかると思ってんのよ! 学園祭までもう三日しかないんだから! ……ったく、しょうがないわねぇ。ほら、あたしが半分持ったげるから、さっさと行くわよ! ……え? あ、ありがとうって……ふ、ふんっ……別に、アンタのために付き合ってあげてるわけじゃないんだからねっ!』


フローレン

「おっほぉ~っ‼ これぞ往年の正統派ツンデレヒロイン! ごっつぁんでーーーす‼」


シズリース

「だぁれが平成で輝いてただけの時代遅れな行き遅れアラサーヒロインよ!!!!」


クロード

「お、おシズさん落ち着いて! 誰もそんなこと言ってませんから!」


ルクス

「うーむ(※納得いってなさそうな感じで)」


リディア

「あら、ルクスさん、いかがしましたの?」


ルクス

「いやあ、なんかこういうのって、私がまだ皇太子だった頃の学生時代におシズちゃんから散々聞いたから、あんまり新鮮味がなくてさぁ」


リディア

「……こ、この人ってば、聞く人が聞いたら羨ま死刑されるようなエピソードをこうも堂々と……まったく自覚ないのかしら⁉ ――でも、おシズさんの学生時代、やっぱりそういう感じでいらしたのですわね!」


シズリース

「――だからそれはあたしの黒歴史だつってんのよッッッ!!!!」


ルクス

「んぎゃああああああ‼」


リディア

「なぜわたくしまでー⁉」


フローレン

「ふ、ふふふ……さあさあ、次はこちらのセリフをお願いします……ッ!」


シズリース

「どうでもいいけど鼻血拭きなさいよ。……って、ええっ、これ読むの? ……ちょっ、ちょっと待っててもらっていい?」


フローレン

「ええ、かまいませんよ。セリフに気持ちを込めるための準備も必要でしょうからね!」


ルクス

「(独り言っぽく)まあ、おシズちゃんのセリフって言っても、どうせいつものような感じだろうし、ガチャ回すついでに、今のうちにイベント消化に集中しとこ。えーと、イヤホン、イヤホンっと」


 

――シズリース、ルクスに近づくが照れくささで視線をそらしたまま。ルクスはイヤホンしてるので気付かず。


シズリース

「え、えっとさ、ルクス……べ、別に他意はないんだけど、このセリフ、あんたにちゃんと聞いててほしいかなーって……。あっ、別に他意はないんだからね! ただ、ちょっと、聞いたら感想ほしくてさ。……え、えと、その……よ、読むね……」


シズリース

「すー……はー……(深呼吸)」


シズリース

『あたしさ……今まで、自分に嘘ついてた。アンタとは、ずっと昔から一緒に育ってきて、兄弟みたいなものだし、そんなわけないって思ってたんだけど。でもやっぱり、これ以上この気持ちに嘘はつけないみたい。その気持ちを隠したくて、あたし、今までアンタにひどいこと言っちゃってたよね。……ずっと素直になれなくて、ごめん。本当はね、あたし……ずっと、昔からアンタのことが――……』


クロード

「こ、これは……ッ!」


リディア

「めたくそに破壊力の高い……ッ!」


フローレン

「甘酸っぱい青春の香りが……ッ!」


ルクス

「ぐおおお! またしてもガチャ大爆死!!!!!」


シズリース

「――って、なんで聞いてないのよッッッ⁉」


ルクス

「え? え? なに、ごめん、もう一回やってもらっていい?」


シズリース

「くっ……もう知らんわッ‼」


ルクス

「あ、あれー? おシズちゃん、ちょ、ちょっとー……? いつもなら容赦なくドゴォッて殴ってくるのに、どうしちゃったの……? なんかちょっと拍子抜けしちゃうんだけど? ね、ねえってばー……?」


クロード

「はぁ~(クソデカため息)。店長がここまで残念な人だとは思いませんでした」


リディア

「はぁ~(クソデカため息)。だぁからモテないんですのよ、この甲斐性なしは」


ルクス

「えっ、なんか私、過去一ディスられてるッ⁉」


フローレン

「(拍手しながら)いやあ、みなさん素晴らしい。ありがとうございます。みなさんのおかげでわたしの枯れた心が潤いました。試練は見事クリアといたしましょう」


クロード

「ということは、これで《聖なる鏡》が手に入るんですか?」


フローレン

「あ、鏡ですね、ちょっとお待ちください。えーと。確かこの中に……はい、これです」


クロード

「机の引き出しに入ってたの⁉」


シズリース

「さっきの試練なんだったのよッ⁉」


フローレン

「単にわたしが聞きたかっただけですが」


リディア

「めちゃくちゃ潔いですわね」


ルクス

「ここまでキッパリ言い切られるとぐうの音もでないね」


フローレン

「……というわけで、みなさんがお求めのこちらの鏡ですが、定価1万2千ゴールド(税込)かっこぜいこみのところ、みなさんの頑張りに免じて、なんと3千ゴールドでお譲りいたしますよ」


クロード

「しかも売りつけようとしてる!」


シズリース

「それ絶対に原価もっと安いでしょ!」


フローレン

「ちなみに先ほどのダミヘは140万ゴールドくらいです」


リディア

「リアルな数字ですわね」


シズリース

「それに比べてやっすいな鏡!」


ルクス

「まあまあ、ここは私が国王としてビシッと、現金一括払いで支払っておこうじゃないか!」


クロード

「それ、国民からの税金ですよね」


フローレン

「はい、お買い上げありがとうございます。領収書いります?」


ルクス

「あ、お願いします。宛名は上様で」


シズリース

「そこはちゃんと記名しなさいよ! ……まあ、なにはともあれ、これで目的のブツは手に入ったわけね」


クロード

「でも、本当にこれで勇者かどうか判別できるんですかね?」


ルクス

「どれどれ、試しにおシズちゃんにかざしてみようか」


シズリース

「あらぁ、やぁだぁもう~♡ もしもあたしが勇者だったりとかしたらぁ~、数多の愚民どもから崇め奉られたりとかしちゃったりなんかして~?♡」


ルクス

「うん。まったくの無反応だね」


シズリース

「チッ!」


クロード

「今すっっごい悪そうな顔で舌打ちした!」


シズリース

「じゃあ、ルクスはどうなのよ」


ルクス

「えー? 私ー? いや~、王様が勇者だったなんて、なんか照れちゃうな~?」


リディア

「無反応ですわね」


クロード

「ですよねー」


ルクス

「……ま、まあほら、私はアルフレートみたいな真性の変態じゃないからさ!」


シズリース

「勇者イコール変態みたいに言うな」


クロード

「でも確かに、店長はバカですけど、変態かというとちょっと違うかも」


ルクス

「クロードくん、それ褒めてるんだよね?」


シズリース

「しっかしこれじゃ、勇者を判別できるのかわからないわね……」


リディア

「とはいえ、ここにはアルフレートもおりませんし……」


ルクス

「ついでだし、ちょっとフローレンちゃんにもかざしてみようぜ」


フローレン

「わたしですか? いやあ、そんな簡単に勇者なんて見つかるわけが――」


シズリース

「……え、ちょ⁉ これ、勇者反応が出てる……⁉」


クロード

「わ! フローレンさんの手の甲に、紋章が浮かび上がった⁉」


フローレン

「おやおや? なんと、わたしにも勇者の資格があったとは、意外でしたね」


シズリース

「なんで鏡の持ち主本人が今まで気づかなかったのよ!」


クロード

「…………」


リディア

「クロードくん、いかがなさいましたの?」


クロード

「あのー、まさかとは思うんですが……リディアさん、ちょっと良いですか?」


リディア

「わたくしですか? いえ、わたくしが勇者であるはずがございませんわ、そんな恐れ多い……」


ルクス

「おっ、おお~! リディアにも勇者反応が!」


フローレン

「見事な紋章が浮かび上がりましたね!」


リディア

「……ハッ! ま、まさか、わたくしも勇者でしただなんて!」


クロード

「あー……やっぱり、これって……――変態判別機ってコトッ⁉」


シズリース

「マジで勇者イコール変態だったんかーーーい‼」


 

《おしまい》

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