銀翼亭ファンタジーライフ

コメディ
コメディシナリオファンタジー

 メタ、パロディなんでもありのファンタジー風のギャグ作品です。令和のノリとかコンプラとか知ったこっちゃねえ的な感じなので、平成風味の懐かしい感じがするかもしれません。

はじめにお読みください

・キャラクターの性別は定めていますが、キャストの性別は不問です。
・YouTubeやツイキャス、Twitterのスペースなど、非営利での配信であれば自由にお使いいただけます。
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・物語の雰囲気を大きく変えない限りは、アドリブやセリフ改変などもOKです。

作品概要

タイトル

銀翼亭ファンタジーライフ

作者

島嶋徹虎

ジャンル

ギャグ、コメディ、ファンタジー

上演時間

約30分

男女比

男2:女2:不問1(※あくまで目安ですので、基本的にはすべて男女不問です)

登場人物

ルクス

【♂】《銀翼亭》の店長。その正体は国王。バカ。


クロード

【不問】クロード・ランドール。14歳。《銀翼亭》のバイトで魔術師見習いの少年。このお話の唯一の良心。


シズリース

【♀】シズリース・フォン・カルメリア。《銀翼亭》常連の女騎士。その正体は近衛騎士団長。隙あらばルクスを亡き者にしようとするが愛情表現的な何かかもしれない。平成時代の過剰なツンデレヒロイン系お姉さん。


アルフレート

【♂】勇者。変態その一。


リディア

【♀】魔術師。変態その二。

シナリオ

(※「」で括られてない箇所はナレーションもしくはモノローグとしてお読みください)


クロード

ここは、冒険者たちが集う宿屋兼酒場 《銀翼亭》。大陸の中でも屈指の交通の要衝となっているこの国には、まだ見ぬ旅の仲間を求めて、世界中からたくさんの冒険者たちが訪れます。


クロード

「あ、店長! おはようございます!」


クロード

僕の名前はクロード・ランドール。魔術師見習いとして魔法を勉強しながら、縁あってこのお店で働いています。


ルクス

「おー、おはようクロードくん。今日も元気だね!」


クロード

この人は店長のルクスさん。この国を治める王様と同じ名前だけど、実は国王はいろいろとあくどいことをしているそうで、あまり評判はよくありません。でも、そんな王様に比べたら、店長はすごく良い人です。……まあ、ちょっと、いや、かなり変な人ではあるけれど。


シズリース

「――ちょっと、ルクス! いるんでしょー⁉ 出てきなさい!」


クロード

今やってきたのは、この店の常連であるシズリースさん。店長とは昔馴染みだそうで、〝おシズさん〟って呼ばれています。


ルクス

「あ、おシズちゃん、いらっしゃ――」


シズリース

「いたわねルクスぅぅぅ! 今日という今日は許さんっっっ‼」


ルクス

「いいい痛い痛い痛い痛いおシズちゃんちょっとたんま耳引っ張らないで」


シズリース

「うるさい! あんた、あたしに黙ってこいつに投げ銭したでしょ!」


クロード

そう言っておシズさんが《魔導端末》を起動すると、空中投影されたホログラムの映像が浮かび上がりました。


ルクス

「おお! それは私の最推し! 《魔導チューブ》で活動する《バーチャルマドチューバー》の魔王院マオちゃんだ!」


シズリース

「こんなガワに騙されてんじゃないわよ! 中身はガチの魔王なんだから!」


クロード

「……って、ガチの魔王がなんてことしてんですか⁉」


シズリース

「曰く、〝人間から富を搾取して破滅させる恐ろしい計画〟らしくてね。今ではフォロワー数も爆上がりなうえ、実際に湯水のように投げ銭しまくって、破産する輩も出てるらしいわ」


クロード

「うーん、発想は確かに魔族っていうか、いろんな意味で悪魔の所業っぽい!」


シズリース

「しかも、『我がカワボと魅力的なガワをもってすれば、人間などイチコロよ!』だとかなんとか言って、アバターのキャラデザも自分でやったらしいし。それにまた自分で言うだけあって、声は良いわ、歌も上手いわ、作詞・作曲もしちゃうわ。そのうえトークスキルも無駄に高いのがクソ腹立つのよね」


クロード

「すごいな魔王。天才か?」


シズリース

「まあ、そのおかげで最近じゃ手段と目的が逆になってて、現実の侵攻作戦がおろそかになってるらしいけど」


クロード

「ある意味平和だなー」


シズリース

「そんなことより! ルクスあんた、《まどつべ》見るの金輪際、禁止だかんね!」


ルクス

「えーいいじゃんいいじゃん、私だって推し活くらいしーたーいー」


シズリース

「だからって国家予算の四分の一をスパチャに注ぎ込むバカがどこにいるか!」


ルクス

「…………」


シズリース

「無言で挙手するな!」


クロード

「こっかよさん……?」


シズリース

「一国の王が敵である魔王の計略にまんまと乗せられてんじゃないわよ!」


クロード

「いっこくのおう……? あ、あの、さっきから理解が追い付いてないんですけど、店長ってもしかして、この国の王様なんですか……?」


ルクス

「いかにも、私が王様です。えっへん」


クロード

「ええええええええええええええ⁉」


ルクス

「いぇーい。ぴすぴす」


クロード

「な、なんか王様と同じ名前だなとは思ってましたけど!」


シズリース

「はあ~……そうよ。今まで黙ってたけど……誠に遺憾で残念無念なことに、そいつこそが正真正銘、この国の王。その名もルクス・ハインリヒ・ベルンハルト・ブラシュティス・(※途中で噛んでグダグダになってください)シュベリオン・ローレンハイツ・カール・ウル・レウス・フォン・フォルゼビューネ――

――言えるかボケ!!!!!!!!!!!」


クロード

「お、おシズさん⁉ 落ち着いて!」


ルクス

「そんで、このおシズちゃんがウチの近衛騎士団長」


クロード

「そうなんですか⁉」


シズリース

「うん。非常に残念なことにね(遠い目)」


クロード

「っていうか、なんでこんな城下町の一角で冒険者酒場なんかやってるんですか⁉」


シズリース

「……なんていうか、話せば長くなるんだけど……」


ルクス

「それはもう、腕の立つ冒険者を集めて売り出すためだよ!」


クロード

「売り出す?」


ルクス

「その通り! この私がプロデュースするアイドルグループ《勇者様御一行》としてね! ちなみに、デビューシングルは『グッデイ☆旅立ち』!」


シズリース

「絶望的なネーミングセンスだわッ!」


ルクス

「そして、魔王討伐を目指すワールドツアーを敢行し、その模様は《魔導チューブ》で随時配信! これは売れる! 売れるぞおっ!」


クロード

「めちゃくちゃ下世話な理由ですね」


シズリース

「……でもまあ、正直こいつの言うことも一理あるのよね。この国で勇者パーティーが結成されたとなれば、その宣伝効果は計り知れないわ。だから、どの国もスポンサーとして勇者と専属契約を結ぼうと躍起になってるのよ」


クロード

「だったら、おシズさんたちも勇者様を直接スカウトすれば良いんじゃないですか?」


シズリース

「それができたら苦労しないのよね……。魔王は〝選ばれし紋章の勇者〟にしか封印できないと言われているけど、そんな紋章を持ってる人ったって、年齢も性別も人種もわからない。この広い世界のどこを探せば良いのやら。これだけ魔法による通信技術が発達してるってのに、なかなかうまくいかないもんよ」


クロード

「なるほど。そこで冒険者が集まるお店をつくって、自然と勇者様が現れるのを気長に待っていると……」


シズリース

「お恥ずかしい話がそういうこと」


クロード

「はー。それでなんだかんだ店長に付き合ってあげちゃうおシズさんもお人好しというか――」


シズリース

「――ぬわぁんか言った?」


クロード

「いえ、なにも」


シズリース

「……まあでも、一応、秘密ね。私がこんなバカに仕えてる近衛騎士団長なんて巷の人たちに知られたら恥ずかしいじゃない」


ルクス

「小学校の頃までは仲良かった女の子に、中学に上がったら急に距離とられるやつだそれ」


クロード

「なんの話ですか」


ルクス

「ったくさー。おシズちゃんもほんとつれないよなー。私たち小さい頃、城内の庭園で永遠の愛を誓い合った仲じゃないかー。ほら、『大きくなったらルクスくんのお嫁さんになる!』『ルクスくんが王様になったらお妃様にしてね!』って――」


シズリース

「――百遍死ねェ‼(SE:ドゴォッ)」


ルクス

「ぶべらッ!」


シズリース

「あたしのッ!(SE:ドカッ) 華麗なる人生のッ!(SE:バキッ) 唯一のッ!(SE:ドゴッ) 汚点ッ!(SE:バゴッ) 黒・歴・史よッ!(SE:グシャッ)」


クロード

「あ、あの、おシズさん……それ以上やったらさすがに店長死んじゃ――」


シズリース

「――いいのよ! こんなやつ多少は死んどいたほうが世界のためだわ!」


ルクス

「お、おシズちゃん……最近コンプラ的なやつ厳しいんだからさ……」


クロード

「いつものことですけど、店長も大概、不死身ですよね」


ルクス

「ま、慣れてるからね!」


クロード

「慣れとかで済むんだ。……いや、それにしても、店長が王様本人だったなんて……王様の評判あんまり良くないんで、どんな悪い人なのかと思ってましたよ」


シズリース

「あ、それね、あたしが国内外に流しといたネガキャン」


ルクス

「なんでそんなことすんの⁉」


シズリース

「いやほら、国民の不満が高まれば、王を倒して革命を起こそうってムーブになるでしょ? そしたら、あたしが先陣を切って王に反旗を翻し、あんたを討ち取る。そしてあたしは救国の聖女として未来永劫、讃えられるってわけ。ね、完璧じゃない?」


ルクス

「悪魔や! ほんまもんの悪魔がおる!」


シズリース

「つーか、あんたがこれまで使い込んできた予算のせいで、国の運営が立ち行かなくなってんの、どうしてくれんのよ! なんなら今すぐここで討ち取ってあげても良いのよ⁉ そもそも、この店を始めてから今の今まで、勇者どころか、まともな冒険者すら一人も現れてないじゃない!」


クロード

「た、確かにあんまりお客さん来ないですよね……」


シズリース

「このままじゃ国庫の破綻よ! ハ・タ・ン!」


ルクス

「ああ、花を植える」


シズリース

「花壇だ‼」


クロード

「……この人たちなんだかんだ仲良いんだよなぁ」


アルフレート

「失礼します」


クロード

「あ、店長、おシズさん、その辺で! お客さんですよ! ――いらっしゃいませ!」


アルフレート

「《銀翼亭》は、こちらでよろしいでしょうか」


クロード

「はい! ようこそ《銀翼亭》へ! 見たところ、冒険者の方ですよね?」


アルフレート

「ええ。俺は剣士アルフレート、こっちは魔術師のリディアです」


リディア

「はじめまして」


クロード

「えっ、その手の甲に浮かぶ、輝く〝紋章〟……まさか、あなたが?」


アルフレート

「ああ……はい、お察しの通りです。……僭越ながら、〝勇者〟と呼ばれる者です」


クロード

「す、すごい! 噂をすればなんとやらですよ! 本物の勇者様です!」


シズリース

「こんな簡単に出会えるとか、今までの苦労は一体なんだったのよ⁉」


リディア

「わたくしたち、旅の仲間を求めていますの。お聞きしたところ、こちらにはレベルの高い冒険者が集まるそうですわね?」


クロード

「え? ……え?」


リディア

「こちらに来れば最高の仲間を得られると、フォロワー数、一千万人の有名マドチューバーがおっしゃっておりましたので」


ルクス

「予算注ぎ込んでステマしておいてよかった!」


シズリース

「お前の仕業かい!」


アルフレート

「ところで、みなさんは?」


クロード

「あ、僕はクロードと言います。この店でバイトしている魔術師見習いです。で、あちらが店長のルクスさん」


ルクス

「しゃっせー! お好きな席へどっぞー!」


クロード

「そして、こちらはうちの常連さんで、このえ――」


シズリース

「(にらみつける)――キッ」


アルフレート

「このえ……?」


クロード

「……あ、えっと……このへぇんに住んでる旅の騎士のおシズさんです」


リディア

「旅の騎士なのにこの辺に住んでらっしゃるの?」


シズリース

「(無視して)シズリースよ。よろしく」


アルフレート

「ハッ! あ、貴女は――」


シズリース

「ん?」


アルフレート

「一目でわかりました。相当な実力者でいらっしゃいますね。ぜひ貴女を我がパーティーにお迎えしたい!」


シズリース

「あら、なかなか見る目あるじゃない」


アルフレート

「――特に貴女のそのおみ足! 鍛えられた太もも、シュッと引き締まったふくらはぎのライン! 素晴らしい!」


シズリース

「そ、そう? 言い方がなんかアレだけど、まあ、褒められるのは悪い気はしないわね」


ルクス

「そんな脳筋ゴリラのどこが良いんだk(SE:殴られる音)――ドォゴフォウッ⁉」


シズリース

「なんか言ったぁ⁉ このボケナスゥ‼」


ルクス

「……聞く前に殴るのやめてください」


リディア

「ところでクロードくん。貴方、魔術師を目指していらして?」


クロード

「あ、はい!」


リディア

「おいくつなのかしら?」


クロード

「え、えっと、十四歳です」


リディア

「ふーん。……ふんふん」


クロード

「あ、あの、なにか……?」


リディア

「……良い。すごく良いですわ。わたくし、伸び盛りの子は大好きですのよ」


クロード

「は……」


リディア

「さ、寝室に行きましょう。お姉さんが手取り足取り教えて差し上げますわ?」


クロード

「……はあっ⁉」


ルクス

「セクシーなお姉さんに誑かされちゃういたいけな少年! お約束のヤツきたこれ!」


クロード

「――あ、あの、あのあの!」


リディア

「フフ、なにかしら?」


クロード

「えっと……鼻血、拭いてください……」


リディア

「おっと、いけない。わたくしとしたことが」


アルフレート

「すまない、少年。リディアは若くて可愛い子を見ると興奮が抑えられなくなってしまう性質なんだ」


クロード

「なるほど。極力オブラートに包んだうえで掻い摘んで言うと、要するに変態さんですね」


ルクス

「はっはっは! なにはもとあれ、ようこそ勇者くんたち! 歓迎するよ! ゆっくりしていってくれたまえ!」


アルフレート

「おもてなしに感謝します、店長殿。こちらのお店は、冒険者クチコミサイトの《旅ログ》でも高評価でしたからね」


クロード

「店長どんだけステマしてんですか」


シズリース

「ステマしてるわりに客少ないのほんとなんなの」


アルフレート

「それにしても、店長殿はこの国の王と同じ名前でおられるのですね」


クロード

「あ、えっと、それなんですけど……」


アルフレート

「いやあ、店長殿は人のよさそうな御仁でよかった。それにひきかえ、この国を治めているルクス王は、歴代国王の中でも史上最悪の王として有名です。国民からの評判はすこぶる悪く、俺の出身地である田舎でも噂が聞こえてくるほどでした」


クロード

「あー」


ルクス

「ちょっとおシズちゃん⁉ キミのせいだからね⁉」


シズリース

「自業自得でしょ!」


クロード

「ちなみに、お二人が聞いた王様の評判ってどんな感じなんですか?」


リディア

「そうですわねぇ。例えば、『隣国の王はあんなにイケメンなのに、どうしてウチのはあんなボンクラなんだ』とか」


ルクス

「…………」


リディア

「『〝優しそう〟しか褒めるところがない』とか、『陰キャそう』とか『モテなさそう』とか」


ルクス

「…………」


シズリース

「そうそう! そのうえバカだしアホだしゴクツブシだし、人望ないし友だちいないし!」


ルクス

「…………(しくしく)」


クロード

「あ、泣いてる」


アルフレート

「おお、店長殿。あなたもこの国の先行きを憂いておられるんですね」


クロード

「単にディスられて泣いてるだけだと思います」


シズリース

「それなら、この国の王に取って代わって、あなたが王になれば良いじゃない?」


ルクス

「おシズちゃん⁉ 何を言いだすの⁉」


アルフレート

「俺が、王に……?」


シズリース

「そう。悪しき魔王を討伐して、ついでに悪政を敷く王まで打倒すれば、民衆はみんなあなたについていくわよ?」


アルフレート

「王か……考えたこともなかったな……」


シズリース

「もしもあなたが王になったらどんな国にしたいのか、聞かせてもらえる? その答え次第では、あたしもあなたのパーティーに加わってもいいわ」


アルフレート

「うーむ……俺が、王になったら……」


クロード

「なったら?」


アルフレート

「国民のすべての女性に黒ストッキング着用を義務付けます」


クロード

「は?」


アルフレート

「中でも40デニールが至高です。それ以上厚くても薄くてもいけません」


クロード

「やっぱりあなたもそちら側の方でしたか」


シズリース

「夏とかどうすんのよ! 暑いじゃない!」


クロード

「そういう問題なんですか?」


アルフレート

「もちろん夏場もです。どんな暑い時でも履き続けさせますよ。だって蒸れ蒸れの黒ストとか最&高じゃないですか」


クロード

「もうダメだこの人」


シズリース

「なるほどね。よくわかった。じゃあ、リディアは? よかったら、あなたの意見も聞かせて?」


リディア

「わたくしですか? わたくしが王になったら……まずは、将来を担う子どもたちの学費をすべて無料にしますわね」


クロード

「お、意外にもこっちはまともっぽい!」


リディア

「さらに、王立アカデミーを創設し、才能あふれるうら若き少年少女たちを一堂に集め、このわたくし自らの手で、彼ら彼女らに英才教育を……ふ、フフ……」


シズリース

「足元、鼻血で血だまりできてるわよ」


クロード

「少しでも見直したと思った僕がバカでした」


アルフレート

「……いや、やはり、俺は王にはなれません。民衆を虐げる悪しき王を討つというのであれば、この力を使うのはやぶさかではない。しかし、この力はあくまで民を守るもの。力を持ちながら心弱き者が民の上に立てば、いつしかその力に溺れ、暴君となり果てるでしょう。俺は決して、完璧な聖人君子ではない。王たる器ではないのです」


リディア

「ええ、そうね。わたくしたちは、あくまでもただの人間。冒険者であり続けることが、わたくしたちの生き方だと思いますわ」


シズリース

「……そう。それが聞けて良かった。確かにこの二人なら、あたしたちも全面的にバックアップできそうね」


クロード

「本当に真面目で良い人たちなんだなぁ。……変態だけど」


 

――その時、店の外から喧騒が聞こえてくる(SE:爆発音と逃げ惑う群衆の悲鳴)


シズリース

「……ん? なんか外が騒がしくない?」


ルクス

「……あ、あれは! 最近ここいら一帯を荒らしまわってるという邪竜ドラゴンだ!」


シズリース

「なんですって⁉」


ルクス

「曰く、漆黒の鱗に覆われた、天を突くほどの巨体を持ち、二本の足で大地を踏みしめ蹂躙する。そして、その禍々しい口からは、膨大な魔力量の熱線を吐き出し、辺り一面を焼き尽くすという――」


シズリース

「……黒くて、巨大で、二足歩行してて、口から熱線を吐く……って、ゴジr――」


クロード

「――それアウトなやつですよねええ⁉」


シズリース

「顔だけでもモザイクで隠せ! 顔だけでも!」


ルクス

「大丈夫、声だけならリスナーには見えてないから!」


アルフレート

「こうしてはいられない――行くぞリディア! 街の人を守るんだ!」


リディア

「ええ、わかったわ」


アルフレート

「――あっ、瓦礫が! 危ない! ……お怪我はありませんか、お嬢さん。さあ、避難場所はあちらです。今のうちにお逃げください」


クロード

「おお! 颯爽と人助けする姿、さすが勇者って感じでかっこいい!」


アルフレート

「ふむ。駆け出していく乙女の、なんと素晴らしき脚線美かな」


クロード

「ああ、うん。台無しですね」


リディア

「――展開せよ、障壁魔法! さあ、みなさん、こちらですわよ!」


クロード

「リディアさんも魔法でバリアを張って子どもたちを守ってます! あんな広範囲にバリアを展開できるなんて、すごい!」


リディア

「あらまあっ、そんなっ、あの子たち、『ありがとうお姉ちゃん』だなんて……――フッ、ロリショタいずジャスティス」


クロード

「鼻血を拭け変態」


アルフレート

「よし、市民の避難は完了したな」


リディア

「ええ、あとはあの邪竜を打ち倒すだけですわね」


クロード

「あっという間に避難させちゃうなんて、さすが勇者様たち! 言動はアホっぽいけど!」


アルフレート

「ゆくぞ、邪竜! ――くらえ! なんか強そうな剣技ッ‼(SE:じゃきーん!)


リディア

「はあああ……! なんかとてつもない魔法ッ‼(SE:どごーん!)


クロード

「勇者様たちの攻撃を食らって、あの邪竜が明らかにダメージを受けてる! 二人ともガチの実力者だったんですね! 言動はアホっぽいけど!」


シズリース

「油断しちゃダメよ! 反撃が来る!」


アルフレート

「なッ⁉ うわあああ!」


リディア

「きゃあああ!」


クロード

「――尻尾で吹っ飛ばされたあああ⁉」


ルクス

「アンのパンチ食らったみたいな吹っ飛び方だったな」


シズリース

「なによそのパンチ」


クロード

「そ、そんな、勇者パーティーでも歯が立たないなんて……」


ルクス

「仕方がない……ここは私の出番のようだね」


クロード

「て、店長⁉」


ルクス

「今、ヤツを止められるのは、おそらく私しかいない。こんなところで勇者たちを失うわけにはいかないからね」


シズリース

「あんた……正気なの? いくらなんでも無茶よ!」


ルクス

「フッ、王様ナメんな。国民を守るのが私の仕事だ」


シズリース

「いくらあんたでも……本当に死ぬかもしれないのよ?(※半笑い)」


クロード

「なんでちょっと嬉しそうなんですか?」


ルクス

「いいさ。私の命ひとつで勇者たちを、そしてこの国を守れるのならな!」


シズリース

「あんたってやつは……本当に、大馬鹿よ……自分の命を投げ出すだなんて……(※笑い堪える)」


クロード

「だからなんでちょっと嬉しそうなんですか?」


ルクス

「うおお、待ってろ二人とも! 今助けに行くぞ!」


クロード

「あ、行っちゃった……」


アルフレート

「くっ……だ、ダメだ……現在の俺たちのレベルじゃ、太刀打ちできない……」


リディア

「そ、そんな……これで終わりだというの……?」


ルクス

「――諦めるな二人とも!」


アルフレート

「なっ、貴方は……」


リディア

「店長さん⁉ どうして⁉」


シズリース

「あなたたちは下がってて」


アルフレート

「おシズさん! ……し、しかし……」


クロード

「本当に店長一人で大丈夫なんですか?」


シズリース

「いいのよ、あんなバカほっとけば。それにたぶん、あの邪竜をなんとかできるとしたら、今この場において、あいつしかいないのは確かよ」


アルフレート

「そ、それは、どういう……」


シズリース

「ま、あのバカと邪竜が共倒れになってくれりゃ、一石二鳥だしね!」


クロード

「あ! 本音出た!」


ルクス

「――そこまでだ、悪しき邪竜ッ! この私が成敗してくれる!」


アルフレート

「おお! 店長殿が勇ましく飛び上がって――」


ルクス

「どっせえええい!」


リディア

「あ! 邪竜の顔の前に!」


 

(SE:ビーム音。そして爆発)


ルクス

「――んぎゃあああああ⁉」


クロード

「案の定、熱線撃たれたあああああ‼」


アルフレート

「……直撃、だと⁉」


リディア

「そんなっ、あの熱線を受けたら、ひとたまりも……!」


シズリース

「――っしゃあ! これで内閣総辞職だわ‼」


クロード

「内閣どころか元首が逝ってるんですけど⁉」


ルクス

「うおおお! まだまだあああ‼ こんなものでええええ‼」


アルフレート

「バカな! ……あれを食らって生きているなど、店長殿は不死身なのか⁉」


シズリース

「なん……だと……」


クロード

「店長生きてたからってマジで絶望の表情するのやめてくださいおシズさん」


ルクス

「――ごふぁッ(吐血)」


アルフレート

「……と思ったら、盛大に吐血したッ⁉」


リディア

「やはり、相当なダメージを受けていらしたのね……!」


シズリース

「よっし!(ガッツポーズ)」


クロード

「渾身のガッツポだ⁉」


リディア

「あ、見てくださいまし! 店長さん、ご自身で吐き出した血でダイイングメッセージを!」


 

※次のピー音はそのまま口で言っても、実際に音をかぶせても、もにょもにょ言ってごまかしてもなんでも大丈夫です。やりにくければ「名前を書くんじゃない、名前を」にしてしまっても構いません。

シズリース

「ゴ(ピー)ラって書くんじゃないゴ(ピー)ラって! しかもご丁寧にイラストまで!」


クロード

「……イラスト付きでダイイングメッセージ書けるくらいなら全然余裕ですね」


リディア

「実際にお見せできないのが残念ですわ」


ルクス

「くッ……こんなことで、負けてたまるか……っ!」


リディア

「そ、そんな……! あんなにボロボロになってまで、どうしてまだ立ち上がろうとするんですの……⁉」


アルフレート

「店長殿……! 貴方がそれほどまで体を張る必要はありません! 俺たちのことは気にせず、お逃げください!」


シズリース

「そうよ! あんた充分がんばったでしょ! もう楽になりなさい! なんならあたしが楽にしてあげるから!」


クロード

「楽になるの意味が違うんですよおシズさん」


ルクス

「……いいや。ここで退くわけにはいかないね……!」


シズリース

「あいつ、一体なにをするつもり⁉」


 

※以下、悟空のモノマネ

ルクス

「――国民のみんな……ちょっとだけでいい、オラに魔力を分けてくれ!」


クロード

「なんか急にパクりだした!」


 

※次のセリフはルクス役のモノマネのクオリティに合わせて判断してください。アドリブでセリフ自体を変更してしまっても構いません。

シズリース

「(全然似てないのが or 無駄に似てるのが)腹立つわね」


ルクス

「よおおおし! 元気が集まってきたあああ!」


クロード

「元気って言っちゃった!」


シズリース

「もう誰かいい加減あのバカ止めろ!」


ルクス

「いくぞ! 流星衝撃魔法――メテオドライバああああああッ!」


クロード

「なんかすごい強そうな魔法出た⁉」


ルクス

「――と見せかけて体当たりいいいいいいいいいい‼」


クロード

「フェイントだったああああああ⁉」


 

――大爆発(SE:どかーん!)

 

――そして、しばしの間


クロード

その瞬間、店長と邪竜はともに大きな爆発の中へと消えていきました。


クロード

そして、爆発の際に舞い上がった厚い砂煙(すなけむり)が晴れたとき、僕たちの目に映っていたのは――


アルフレート

「邪竜の姿が……跡形もなく……」


リディア

「すべて、終わりましたの……?」


クロード

「あれっ、店長は⁉」


アルフレート

「て、店長殿……まさかっ!」


リディア

「やはり、ご自身を犠牲に……ッ⁉」


シズリース

「……無茶……しやがって……!」


クロード

「あ、本気で嬉しそう」


シズリース

「ともあれ――こうして、バカ一匹の尊い犠牲によって、王国は救われたのであった! めでたし!」


アルフレート

「店長殿……邪竜を道連れにするなんて……貴方こそ本当の勇者です!」


リディア

「店長さん……あなたの勇気、決して忘れませんわ……!」


ルクス

「……あ、あのー、感動してもらってるところ悪いんだけど、私まだ生きて……むぎゅっ」


シズリース

「――でもまあ、なんだかんだあいつがいなくなると寂しくなるわねー」


クロード

「おシズさん、踏んでますよ」


シズリース

「(無視して)――さあ、みんな、祝勝会しましょ! 今夜は宴よ宴! めでたいからお赤飯焚くわよ!」


ルクス

「ちょ、待っ、待って、おシズちゃっ、そんな、何度も、ジャンプしないでッ」


リディア

「――ハッ! おシズさんが踏んでらっしゃるそのボロ雑巾みたいな汚らしい物体は……ま、まさか、店長さんですの⁉」


クロード

「言い方よ」


アルフレート

「い、生きておられたのですか⁉ ……おシズさんのおみ足で踏まれるとは……な、なんて羨ましい……!」


クロード

「あなたは黙っててください」


シズリース

「いや! あたしたちは何も見てない! 見なかったことに! 見なかったことにしよ!」


ルクス

「おシズちゃんっ、やめて、土かけないでっ! 埋めようとしないでッ!」


クロード

「どっから持ってきたんですか、その大きなスコップ」


シズリース

「クロードくん……これは! シャベルよ!(※ド真剣に)」


クロード

「そこはどうでもいいですって!」


アルフレート

「……おシズさん……店長殿は一体、何者なんですか? 我々のレベルはまだ駆け出しとは言え、並みの冒険者よりは腕は立つと自負しています。しかし、それを軽々と上回るあの戦闘力は……」


リディア

「どうやら、この街には店長さん自身の魔力を増幅させる〝魔法陣〟が敷かれているようですわね。街全体を範囲とするほど大規模なうえ、邪竜をも消滅させるほどの魔力を集められる実力者なんて、この世界広しと言えども、そうはおりませんわ」


シズリース

「むう……そこまで見抜いていたとはね……」


クロード

「……この人たち、実力だけは確かなんだよなぁ。実力だけは」


シズリース

「はあああああ(深ぁいため息)……バレちゃっては仕方ないわ。……こいつはね、まさしくこの国の王にして、世界でも屈指の大魔法使い。そして私は、このバカのお目付け役、兼、近衛騎士団長のシズリース・フォン・カルメリアよ」


アルフレート

「なッ……」


シズリース

「リディアの言う通り、こいつは王都全域に敷かれた魔法陣によって、この国を守れる程度の力は出せる。だけど、それも今回みたいな緊急時にしか発動できないし、そもそも魔王の封印は、紋章を持つ勇者にしかできないからね。それで、将来性のある勇者を求めて、お忍びでこの店を営業してたのよ」


アルフレート

「そ、そうだったのですか……!」


クロード

「僕も今日さっき知ったんですけどね」


ルクス

「まあ、そういうことだよ、アルフレート君、リディア君。キミたちには、ぜひこの国を拠点に、がっつり経験値を稼いでレベルを高め、魔王討伐に臨んでもらいたいんだ」


アルフレート

「……店長殿!」


リディア

「まさか、店長さんが国王陛下でいらしただなんて……わたくしたちは、なんというご無礼を!」


アルフレート

「ああ。俺たちは誤解していました。貴方が最悪の王などとは、とんでもない。貴方こそは、誠の善き王です!」


ルクス

「ふふーん、くるしゅうないくるしゅうない! ならば今一度、我が名をその耳に刻み付けるがよい! そう、この私こそが、ルクス・ハインリヒ・ベルンハルト・ブラシュティス(※途中で噛んでグダグダになってください)・シュベリオン・ローレンハイツ・カール・ウル・レウス・フォン・フォルゼビューネ――

――言えるかボケッ!!!!!!!!!!!!!!!」


クロード

「……あんたもかよ!」


 

《おしまい》

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