ネイキッド【Vol.13向け書き下ろし】

シナリオ
シナリオヒューマンドラマファンタジー

前を向くことは、誰にでもできる。

はじめにお読みください

  • 本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません、
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  • 物語の雰囲気を大きく変えない限りは、アドリブやセリフ改変などもOKです。
作品概要

タイトル

ネイキッド


作者

瑞田多理 (@TariMizuta


ジャンル

現代異能 ヒーロー リーダー


上演時間

約40分?


男女比

男1:女1:不問3

登場人物欄の説明
演者の性別:作中の性別 年齢などの属性
となっております。

登場人物

ジュン

男性:男 27歳
・本作の主人公(?)ゲームとありとあらゆる配信を見るのが生きがいの引きこもり。
・レゾナンスによって引きずり出された「ヒーロー」ネイキッドとの二重人格
・彼が引きこもったことにも、全ての人間が迷うのにも必ず理由がある。そしてその葛藤は必ず解決される。物語でも、現実でも。そういった期待を一身に背負うことになる、英雄。


ネイキッド

不問:不問 年齢なし、お好きなように
・本作のヒーロー(?)上裸にカーキ色のトレンチコート、ジーパンという変態ルック
・「行き場を失った人」の前に現れては立ち直らせる、謎の怪人
レゾナンスが引き出したジュンの本質の、一側面。
・「このままではダメだ、前へ進まなければ」という強迫観念の具現化でもある。


ユミエ

女性:女 23歳以下
・本作のヒロイン(?)雑居ビルから飛び降り自殺を試みたところをネイキッドに(無理やり)救われる。
・レゾナンスに引き出された本質は、「人の矢印を見る」こと。つまり人の欲望や渇望を視覚として見ることができる。その本質が、人の本性を剥き出しにしたことで彼女は追い詰められた。


ニノミヤ

不問:不問 27歳以下
・本作のバディ(?)引きこもりのジュンを家事やら家計管理やらで支えるフリーのITエンジニア。上の中くらいの腕前。
・レゾナンスに引き出された「超共感覚性」によって、聞かなくてもいい人の声が聞こえてしまう。
・ニノミヤが聞きたかったのは、本当にただ一人だけの声だった。ずっとそばに居たけれど、それに応えられたことは一度もなかったが。


レゾナンス

不問:不問
・本作のヴィラン(?)謎の多い配信者。ネイキッドが活躍するたびに、ジュンに言わせれば「お気持ち表明」とでも呼ぶべき配信をする。
・レゾナンスはいつからか「人の本質を引きずり出す力」を持っている。
・レゾナンス自身がなぜ存在しているのか、それ自身にも判然としていない。ゆえに持たざる全ての代弁者であることができたし、そうせざるを得なかった。

シナリオ
 

ネイキッド

「そりゃあ、……つれぇよな。どこにも行くな! 右を向けって言われたら右! 左って言われたら左! でもそっちに何もなくったって……悪いのはお前だもんな」


ネイキッド

「だけどよ! そんなところから一歩踏み出して、一体どこに行くつもりだよ!」



ユミエ

「──なによ……その手。これから飛び降りようっていう私を……受け止めようっていうの。」



ネイキッド

「いや? せっかちなんでね」


ユミエ

「は……? 何しゃがんでんの……」



ユミエ

「──えっ! きゃっ!」


ネイキッド

「ほれ、捕まえた。どこへでも、行きたいように。ほんとうの自由ってのはこう言うもんだ」


ユミエ

「は、離して」


ネイキッド

「やなこった……」



ネイキッド

「ほれ。もう妙な気を起こすんじゃねーぞ」


ユミエ

「……あんたが。ウワサの〝ネイキッド〟なの」


ネイキッド

「そういうあんたは……ユミエっていうんだな。社員証つけっぱなしだぜ」


ユミエ

「私は……また飛び降りるよ」


ネイキッド

「そうはならねぇ。だってあんたは、前を向けただろ」



ユミエ

「あれ……ほんとだ。あんなに……がっかりしてたのに」


ネイキッド

「そうだ! じゃ、帰るわ。家にいないと、こいつが悲しむんでね」


ユミエ

「待って、ネイキッド」


ネイキッド

「じゃあな! また、は会わないと思うが!」



空ける

ネイキッドが走り去るまでの間を空ける。



ユミエ

「……ははっ。今更震えてる。あんなところから……」


ユミエ

「真っ暗で、何にも見えてなかった……。でも、照らしてくれた」



ユミエN

そう、〝ネイキッド〟 。死にたい人を、助けて、死にたくなくして去っていく。上裸でジーパン、カーキ色のトレンチコート。ほんとに変態ルックで、ほんとに『ヒーロー』だった。


ユミエN

どこの誰なんだろう……。追いかけて、見ようかな。


ユミエN

ピカピカの、どこにでも伸びる、〝矢印〟を。



§



役の説明

この時点でのジュンは「楽しいと思って笑う」ことができないので、仮に笑い声風の声を入れる場合でも嘲笑のニュアンスでお願いします。



ジュン

「はぁ〜〜……! 身体中がメキメキ言ってる……。バカネイキッド、僕の身体だぞ。地上15mまで跳ぶならそう言えっての」



ジュン

「またニュースになってら。こんな、人ひとりの命がさ」


ジュン

「ワイドショーのトップニュースだ! おかしいよな、ニノミヤ」



ニノミヤ

「その子……ユミエだっけ? ジュン。早速、会社を辞めたみたい。背伸びとため息が聞こえたよ」


ジュン

「27歳無職の僕ルートか」


ニノミヤ

「そうはならない、んだろ。照らしたんだから。……これ、多分〝レゾナンス〟も見てるでしょ」


ジュン

「ああ。始まってる」


ニノミヤ

「そんなチャンネルに張り付くな」


ジュン

「なんせ古参だからな」



レゾナンス

「──ネイキッド。君はまた一つの命を救った……つもりになっているのだろうが」


ニノミヤ

「相変わらず悪趣味な仮面だな。矢印……が、巻き付いてるのか」


ジュン

「声がこもってんぞ……いつものことか」



レゾナンス

「思い上がるな。君は彼女を……押さえつけたのだ、地獄へと」



ジュン

「……そうだよな」


レゾナンス

「何者にもなれず、なりかたも分からず……しまいに私が引き出した〝本質〟にすら彼女は絶望した」


ニノミヤ

「ジュン、モニターに近づきすぎ」



レゾナンス

「君ならわかるはずだ。その苦しみが。なりたかった姿が〝今〟とこすれあい、削れて折れることがどれほどの痛みか……」


ジュン

「ああ。わかるよ」



ニノミヤ

「(被せて)はい、動画は一日三十分まで」


ジュン

「まだ二分しか」


ニノミヤ

「ワイドショー二十八分。映画見るからどいて」


ジュン

「パソコンでみろよ。納期もやべぇんだろ」


ニノミヤ

「納品済みだよ。同居人がクソ配信を見てる間に」



ジュン

「……クソって」


ニノミヤ

「あいつの声、嫌いなんだよ。ガヤがうるさいったらない」


ジュン

「〝超共感覚〟ってやつか? 叫びが聞こえるっていう」


ニノミヤ

「とても数え切れない……同接の三倍はいる」


ジュン

「つくづく、パソコンの先生が変な〝本質〟持ってんだな」



ニノミヤ

「お。ユミエが近づいてきてるけど、お前家教えたの?」


ジュン

「……は?」


ニノミヤ

「あと三十メートル……まっすぐ来るね。もう団地の前。階段を上ってくる」


ジュン

「いやいやいやいやいやいやそんなわけない! ニノミヤ、頼んだ」


ニノミヤ

「追い返すの」


ジュン

「他に何があんだよ!」



ジュン

「ヒェッ……! じゃ、頼む」


ニノミヤ

「……めんど」





ニノミヤ

「はい……どちら様」


ユミエ

「あれ……確かにここのはずだけど」


ニノミヤ

「……なるほどね。〝矢印〟を追ってきたんだ。ネイキッドの眩しいやつを」


ユミエ

「あなたも、矢印が見えるんですか」


ニノミヤ

「それが見えたら苦労しないよ、ユミエ、サン。ボクはニノミヤ」


ユミエ

「初めまして、ですよね。じゃあ」


ニノミヤ

「(被せて)そう、レゾナンスのせいで聞きたくないものまで聞こえちゃう」



ユミエ

「……私は、レゾナンスのおかげでここに来れた。あなたの矢印も見えます。左手に何を隠し持ってるかも」


ニノミヤ

「ってことは……覚悟完了ってわけ」


ユミエ

「どうしてもひとこと、ネイキッドに言いたくて」



ニノミヤ

「はぁ……」



ニノミヤ

「聞こえてただろ……どうする? は? 始末しろ……? 観念しろカス。いつかこんな本質のやつと当たることくらい、わかってたろ」



ユミエ

「……奥の方にいらっしゃる……んですかね?」


ニノミヤ

「ヒーローも真冬に裸だと風邪引く……ってことにしといて」


ユミエ

「始末しろ……って?」


ニノミヤ

「そんなこと言ったっけ?」


ユミエ

「観念しろカスって?」


ニノミヤ

「伝言があるならボクが聞く」



ニノミヤ

「ん」


出来事

ニノミヤがスマホで「帰ったフリして」って文字を書いたスマホを見せる。


ユミエ

「……! わかりました!」


ニノミヤ

「人見知りなんだ、ああ見えて」


ユミエ

「そうですね! 直接言えないなら、帰ります」


ニノミヤ

「それが一番喜ぶよ」


ユミエ

「では。また、……は、来ないかもですけど!」



ジュン

「……助かったよ、ニノミヤ」


ユミエ

「あ、ネイキッド」


ジュン

「……え? か、かか帰ったんじゃ」


ニノミヤ

「ドアが開いてしまっただけ」


ジュン

「ニノミヤー!」


ユミエ

「でも、良かったです」


ジュン

「な、な、な、何のようですか。そもそも何のことですか。ネイキッド? 僕はただの27歳無職です……あ、次の配信。では忙しいので」


ユミエ

「……すごい早口」


ニノミヤ

「1.5倍速だね」


ジュン

「本当何しに来られたんですか。マジで。僕、本当にただの引きこもりなので」


ユミエ

「違います。ヒーロー」



ジュン

「……それは、ネイキッドだ。僕じゃない」


ユミエ

「……でも」


ジュン

「(被せて)マジで迷惑なんです。僕は配信を見て寝るだけなのにあいつが外に出ると一日使い物にならないんですよ。筋肉痛で」


ニノミヤ

「(被せて)で? ネイキッドに言いたいことって?」


ユミエ

「……じゃあ」


ジュン

「(被せて)いやだから」


ニノミヤ

「(被せて)どーぞ」



ユミエ

「……レゾナンスに会って。……ずっと知りたかったみんなの”想い”の向きがわかるようになって……。誰も私のことなんかいらないんだって、……泣いてた。けど、あなたが助けてくれた」


ジュン

「は、はい」


ユミエ

「さっきの配信、私も見てました。……レゾナンスの居場所、わかります」


ニノミヤ

「……マジ?」


ユミエ

「……日本中から矢印が集まって、イソギンチャクみたいになってて、……レゾナンスはそこにいます。そこから伸びる、とっても太い矢印も。ネイキッド、レゾナンスと両思いなんですね」



ネイキッド

「……教えてくれて、ありがとよ」


ユミエ

「背筋が伸びた」


ニノミヤ

「ネイキッド。連日はダメだ。戻って来られなくなる」


ネイキッド

「(被せて)今がその時だ。そうだろ」


ニノミヤ

「……じゃあ止めない。〝両思い〟だもんな」


ネイキッド

「助かる。じゃあユミエ、道案内頼む」


ユミエ

「ひゃっ!」


ニノミヤ

「女の子を肩に担ぐ奴があるかよ」


ネイキッド

「ニノミヤ」


ニノミヤ

「んだよ」


ネイキッド

「ちょっくら、救ってくる」


ニノミヤ

「……おう」



ニノミヤ

「ああ、救ってこいよ。何も知らないと思いやがって」


ニノミヤ

「……ばかジュン」



§



ネイキッド

「ここか?」


ユミエ

「死ぬかと思った……ビルの屋上をぴょんぴょん」


ネイキッド

「どこへでも、行きたいように、だ」


ユミエ

「はぁ……正面の203号室です」


ネイキッド

「じゃあ待っててくれ。すぐ済ます」



レゾナンス

「期待通りだ──ネイキッド。そしてユミエさん。よくやった」



ユミエ

「……え?」


ネイキッド

「おでましか」


ユミエ

「待ってレゾナンス。それって」


レゾナンス

「部屋で暴れられては面倒だ。配信用の機材はなかなかに高価でね」


ネイキッド

「じゃあまずはその悪趣味な仮面からだ!」



ネイキッド

「へっ、タフさは座りっぱなしでも変わらずか」


レゾナンス

「いいパンチだ。ヒーローらしい」


ネイキッド

「光栄だよ!」



ネイキッド

「くっ」


レゾナンス

「ネイキッド。なんて眩(まばゆ)い……外向きの矢印。ジュンくんの、本質の、半分」


ネイキッド

「……! やめろ、お前!」


レゾナンス

「その眩しさを、……どれほど望んだことか」



レゾナンス

「どこにでも、行きたいように」


レゾナンス

「真っ暗な部屋から、飛び出して……」


レゾナンス

「赦すよ、自由になれ」



ネイキッド

「レゾ……ナンス! お前は」


ユミエ

「レゾナンス! 助けてくれたんじゃなくて──!」


ネイキッド

「う、……ぐ。あ、あああああぁ!」



空ける

ネイキッドがジュンと入れ替わるまでの間をとる



レゾナンス

「そして……。ようやく解き放たれたな。ジュンくん」



レゾナンス

「君はありのまま……暗闇に浴したまえ。それを赦すのも、解放だ」



ユミエ

「……答えて! レゾナンス!」


ジュン

「うわぁぁぁ! 眩しい、熱い! やめ、やめてくれ!」


ユミエ

「……! ネイキッド!?」


ジュン

「ヒィ! 近寄るなぁ!」


ユミエ

「きゃっ!」



ニノミヤ

「ちゃんと相手を見ろバカ!」



ジュン

「ぐえっ」


ニノミヤ

「ユミエ、車に押し込んで! 退却!」


ユミエ

「……はい!」



ニノミヤ

「レゾナンス……。よくもジュンからネイキッドを、奪ったな」



§



ユミエ

「教えていただけるなら、でいいんですが」


ニノミヤ

「こうなったら一蓮托生だ。何でも聞いて」


ユミエ

「……レゾナンスは……ネイキッドがジュンさんの半分だって。ジュンさんも、レゾナンスに助けを求めたんですか」


ニノミヤ

「友達甲斐のない奴だよ」



ニノミヤ

「あいつ、人生の波がデカく来すぎてね。何もかもと関わりたくなくなる不幸と、でも生きていける幸運が、ほぼ一緒に来たんだよ」


ユミエ

「ジュンさんから伸びてる、行き先のない〝線〟 。気になってたけど」


ニノミヤ

「それが、ジュンの本当の〝本質〟なんだろうね」


ニノミヤ

「どこにでも行きたいように。そうしたいけど、でもどこに行きたいのか、行っていいのかもわかんない」


ユミエ

「だから、2つに割れた……?」


ニノミヤ

「たぶん。あいつ、ボクにはなんにも話してくれなくてね」


ユミエ

「……あれ」


ニノミヤ

「レゾナンスに動きは?」


ユミエ

「……いえ、まだイソギンチャクは同じ場所にいます……新しい矢印を集めながら──」



ユミエ

「やっぱり。レゾナンスが配信してます。けど、矢印の増え方がすごい」


ニノミヤ

「そいつはビッグニュースだ。あのアパートにいるんだね」


ユミエ

「ニノミヤ……さん?」


ニノミヤ

「行ってくる」


ニノミヤ

「(独り言のテンション)……もう、ジュンがあいつの声を聞かずに済むように」


ユミエ

「え、待って。ニノミヤさん」



ユミエ

「鍵……」


ユミエ

「──こんなにたくさんの矢印。」



レゾナンス

「……いまこそ、解き放たれよう。すべての痛みから、摩擦から」


ユミエ

「コメント、すごい勢い。『もう我慢しなくていいの』『さすがレゾー様』……細い矢印がいっぱい集まって」


レゾナンス

「感じる。諸君を押しつぶす抑圧を。……そのすべてから、我々が解放する。そうだ。私とその源を同じくしながら道を違え……いま再び手を取り合うことになった彼と」



レゾナンス

「そう……我らがヒーロー、ネイキッドだ」



レゾナンス

「残念ながら姿を見せてはくれない……なぜか? 彼が〝ヒーロー〟だからだ。皆が真に必要とした時に、現れるからだ。そしてその時が始まりだ! 諸君、待て。然(しか)して希望せよ。夜明けは、近い」



ユミエ

「……そうやって、みんなを導いてさ、〝リーダー〟」



ユミエ

「そう、リーダー。初めて私の手を引いてくれた人」


ユミエ

「そのあなたから、どうして〝線〟が伸びているの。まるで、どこにも行けないみたい……じゃない」


ユミエ

「次の配信は三日後、だよね」



ジュン

「(悪夢を見ている)んん、うう」


ユミエ

「ジュン、大丈夫だよ」


ジュン

「(悪夢を見ている)んん、助けて──」


ユミエ

「……みなくていい。光なんて。どこにも行きたくないのに、たくさん動いたもんね」


ユミエ

「わかるよ。私も、そうだったから」



ユミエ

「また明日来る。食べて。お昼に買った菓子パンで……ごめん」



§



ユミエ

「何にも、食べなかったね」


ジュン

「(弱りきって咳き込む声)」


ユミエ

「うん。大丈夫。大丈夫だよ」



レゾナンス

「……御機嫌よう。良き、曇天だ」


ユミエ

「始まった……」


レゾナンス

「親愛なる諸君、配信の説明欄を見てほしい。そして是非〝応援〟してほしい」


ユミエ

「……ボタンだけのページ。『応援!』って……?」


レゾナンス

「そのボタンを押せば、ネイキッドに声が届く……。そう。諸君の力が必要だ……。今日をその日とするために、君たちが助けを求める、声が!」



出来事

「解放を」とうめく声が広がっていく。


出来事

「解放を!」とうめく声が次第に重なっていく。



ユミエ

「ボタンとコメントが連動してるんだ。『助けて』ってこんなに、たくさん」


レゾナンス

「そうだ、もっと! その渇望でネイキッドを呼び覚ませ!」



ユミエ

「でも……! これのどこが解放なの、リーダー! 矢印を集めるだけ集めて、そのあなたはどこへも行けない!」


ユミエ

「やり場のない気持ちに……まるで引きずられてるみたい。絶対に壊れちゃうよ。こんなのぶつけられた方も──ぶつけた方も!」


レゾナンス

「ああ、もっとだ。もっと! その力が、全てを打ち破る!」



ユミエ

「本当に助けて欲しいのは、あなたなんでしょ……?」


ユミエ

「リーダー! 見せてよ、教えてよ! あなたの〝線〟は、どこへ行きたいの!」



ニノミヤ

「目を覚ませ、バカ」



ユミエ

「……! ものすごい荒らしが来てる」


ニノミヤ

「〝目を覚ませバカ〟 。〝目を覚ませバカ〟 。〝目を覚ませバカ〟」


レゾナンス

「取り合うな。自由を掴むのだ!」



ニノミヤ

「目を覚ませ──」



ニノミヤ

「目を覚ませ……バカ野郎が!」



ユミエ

「アカウントは違うけど、きっと同じ人。……そっか、これ!」


ジュン

「眩しい」


ユミエ

「ほら、呼ばれてるよ。『目を覚ませ』『バカ』って!」


ジュン

「離せ、眩しいのは嫌だ」


ユミエ

「そうだね。見たくないものが見えて痛いもん」



ユミエ

「でも、何も見えない冷たさよりずっといい! 今、みんなが矢印に巻かれて死んじゃいそう!」


ジュン

「……うう」



レゾナンス

「裸のヒーローに、鎧を!」


ユミエ

「拓(ひら)いて! みんなの目を塞ぐ、真っ黒な矢印を!」



ジュン

「……ネイ、キッド」


ユミエ

「そうだよ。あなたの、たった半分!」


ジュン

「僕と、半分? ……そうだ、そうだった」


ユミエ

「あのピカピカの矢印があなたのたった半分なら! どこにだって行けるよ、ジュン!」


ジュン

「そうだよ、だから! 僕はもうどこにも行かない! 行かないんだ!」


ユミエ

「私は何も知らない……けどわかるよ。レゾナンスと同じくらい、あなたを求める矢印が見えるから! 応えてよ、ヒーロー!」


ジュン

「ああ! 違う! なんだこれ……うおおおぉ!」



ニノミヤ

「(独り言のテンション)……その声が、ずっと聞きたかった」



ニノミヤ

「ほら、もうひと押し足りないぞ」


ニノミヤ

「ボタンなんかで満足するな。──呼べ! ネイキッドを!」


ニノミヤ

「お前たちの──声で!」



空ける

5秒くらい


ジュン

「ちく、しょう……!」



§



ネイキッド

「やぁ、ジュン。少し痩せたな」


ジュン

「……ネイキッド」


ネイキッド

「ずっと目の前にいたさ」


ジュン

「……下向いてたから気づかなかった、とか言うのかよ」


ネイキッド

「(ちゃんと前のセリフを待って)違うのか?」



ジュン

「呼ばれてるのは、ネイキッド。お前だよ」


ネイキッド

「ああ。君の半身だ」


ジュン

「半分だけであの声援に応えろって?」


ネイキッド

「ネイキッドはずっとそうしてきた」


ジュン

「僕の了解も取らずにな」


ネイキッド

「そうだよな。悪かった、好き放題やって」



ジュン

「けど、僕も悪かった。お前を裸にしたのは、僕だったな」


ネイキッド

「ようやく、君のことを照らせたか」


ジュン

「勘違いすんな。僕は自分で決めたんだ」



ネイキッド

「そういうことなら、あとは頼んでいいか?」


ジュン

「まだ、怖ぇよ。でも……」



ジュン

「──ああ、任せとけ!」



§



ジュン

「待たせたな……離してくれ」


ユミエ

「……ちゃんと、眩しいね」


ジュン

「──ここで見ててくれ」



ジュン

「ネイキッドの、……僕の、輝きをさ」



ニノミヤ

「ハァ……ハァ……。おせぇんだよ、バカ」


ユミエ

「……頑張って」



§



レゾナンス

「駆逐したか……」


レゾナンス

「……罵倒こそ混じっていたが、私も同じ思いだ。目を覚ませ!」



レゾナンス

「我々は何のためにいま、叫んでいる!?」


レゾナンス

「今更問うまでもないな!? 諸君自身のためだ! さぁ行くぞ! 拳を挙げろ! 諸君を押し潰そうとする何もかもを!」



役の説明

ここから先のジュンは「楽しそう」に振る舞うことができます。



ジュン

「ぶっ壊せ! なんてな」



レゾナンス

「……ジュンくん。その出で立ち」


ジュン

「寒い……。調子こいて上脱ぐんじゃなかった」


レゾナンス

「滑稽だな。……抜け殻になることを望んだ君が、今更その姿を真似るなど」



ジュン

「いや……でも、これでちょうどいいのかもな」


ジュン

「だって──よッ!」


レゾナンス

「ウグッ……。どこからそんな力が。ネイキッドは私の中に」


ジュン

「口開けてっと大事な舌噛むぜ」


レゾナンス

「ガッ──! バカな、どうして貴様が前を向ける!」


ジュン

「体も、心も! 動いたらこんなに熱くなるんだもんな!」


レゾナンス

「待て」



空ける

レゾナンスがアッパーを受けて気絶する間を空ける。


ユミエ

「ごめん、リーダー……」



ジュン

「よし──マイク、これか。……うわっ、コメント早。じゃあ映ってるし聞こえてそうだな」



ジュン

「よぉ、ネイキッドだ。お望み通り蘇ったぞ。そんでお前らのレゾナンスをボコった」


ジュン

「おう、どんな気持ちだ?」



ジュン

「かかってこい。ネイキッド……僕は。逃げも隠れもしねぇ」


ジュン

「それが〝ネイキッド〟だ。どこへでも、行きたいように。全部僕が決める」


ジュン

「お前らは、……どうだ? できるか? 目を覚ませ。ああ何度でも言ってやる。目を覚ませ、バカども!」


ユミエ

「……言い過ぎだよ。でも、ふふ」


ニノミヤ

「ようやく言えたか。はぁ……」



出来事

解放を呼ぶ声が弱まって、ネイキッドを呼ぶ声が強まる。



ジュン

「ん、後ろ?」


レゾナンス

「皆に、気安く触るな!」


ジュン

「(冷静に)離せよ。見てみろ」


レゾナンス

「貴様こそよく見ろ。まだ終わってない」


ジュン

「誰でもいいんだ。スカッとすれば、誰でも」


レゾナンス

「それでいい! たとえどんなに少なくとも!」


レゾナンス

「倒れてなるものか! 決して! 私を寄る辺にするものがいる限り!」



ジュン

「う、なんだこれ──」


レゾナンス

「ジュン! お前も私も! 同じだったのに! ネイキッドはお前を選んだ!」


ジュン

「あ? やべ、意識飛ぶ……」


レゾナンス

「(被せて)私が! そうするはずだったのに!」



ネイキッド

「(ちゃんと待ってから)ああ」



出来事

レゾナンスの心象世界に入る



ネイキッド

「そうだな、レゾナンス」


レゾナンス

「なにしに出てきた。ずっと、ダンマリだったのに、今更」


ネイキッド

「君が、求めてくれたからだ。ヒーローは必要な時に現れる。君の言葉だ」



空ける

レゾナンスが呆然としている様子を示す。



レゾナンス

「笑わせるな。これだけの想いを集めれば、お前などいらん。消えろ!」



ネイキッド

「どうした、リーダー」



出来事

「解放を!」のコールが遠めに聞こえる


出来事

「レゾナンス」を呼ぶコールも混じる



ネイキッド

「君を呼ぶ声に、そんな虚勢で応じるのか?」


レゾナンス

「虚勢で上等。それが〝レゾナンス〟だ。──私だ!」


ネイキッド

「違ったろう。裸のヒーローを描いた、その時は」



空ける

レゾナンスが虚をつかれる一瞬の間



レゾナンス

「ネイキッド。お前、あの時の」


ネイキッド

「他愛もない約束。だがジュンは確かに覚えていたよ。だからネイキッドが必要だった。リーダーを失ったあいつには」


レゾナンス

「(被せて)黙れ!」



ネイキッド

「効いたぞ、リーダー」


レゾナンス

「お前に務まるものか! 自分勝手に人を引きずるだけのお前に」


ネイキッド

「今の君と、何が違う」



ネイキッド

「その、矢印を押し固めた仮面だろう。全てを集めて押し殺すことを選んだ、自分自身だろう? 本当に壊したいのは」


レゾナンス

「今更そんなことができるものか。私はレゾナンスだ。私を求めるものが、たった一人でもいる限り」


ネイキッド

「そうだ。だから、ネイキッドがここにいる」



レゾナンス

「っ! ──! くそ……。ネイキッド」


ネイキッド

「ん?」


レゾナンス

「私は、もう逃げられない。逃げたくない。これだけの矢印から」



レゾナンス

「でも、私は! そのたった一人が誰だったか! 思い出してしまった! お前のせいだ! お前の!」



ネイキッド

「それがスタートラインだ。──行きたいか。どこへでも、行きたいように」



レゾナンス

「……都合のいいことばっかり」


レゾナンス

「本当に、行けるかな」



ネイキッド

「──行けるさ!」



レゾナンス

「……遅いよ。──ヒーロー」



ジュン

「……あぶね」



空ける

ジュンがレゾナンスを横たわらせる間を開ける。



ジュン

「……レゾナンスは、ようやく休めたみたいだ。お前らのためにずっと気張ってたみたいだし、しばらくほっといてやりな。はい、わこつー」



出来事

配信が止まる



ジュン

「体が、勝手に動いた。助けなきゃって、勝手に」


ジュン

「──レゾナンス、なんで泣いてんだよ」


ジュン

「……会えたかよ、お前の──ヒーローに」



ジュン

「──じゃあな!」



§



ユミエN

配信界隈を騒がせた〝レゾナンスの放送事故〟から……早いもので二月(ふたつき)が経ちました。


ユミエN

私は、新しい仕事に励んでいます。楽しいことばかりじゃないけれど、なんとか。自分の矢印とちゃんと向き合って決めたことなので。


ユミエN

それに、ちょっとした役得もあるので……。



ユミエ

「──あなたにもらった力、今はとてもありがたいです」


ユミエ

「使い道がみつかったので。そのおかげであなたと再会することもできました」


ユミエ

「……ありがとう」


ユミエ

「みんなはすぐ飽きちゃって。あなたのことを覚えている人は少ないかもしれない」


ユミエ

「だけど、少なくとも私は。ずっと覚えています。私の、リーダー」



ユミエ

「偉い、ちゃんと食べられましたね」


ユミエ

「また来ますから。いつか……素顔を。全部教えてください」



§



ニノミヤ

「ほい、動画は一日三十分!」


ジュン

「あ? 今シークバー見てたぞ! 絶対、二十八分だった!」


ニノミヤ

「広告が二分あった」


ジュン

「広告もカウントするのかよ! つかお前、僕のことそうやってずっと監視するつもりか? 仕事しろ仕事! ノマドワーカーだからって働かなくていいわけじゃ」


ニノミヤ

「(被せて)見たまえ」


ジュン

「……おい、なんだこの、6桁」


ニノミヤ

「ちょっとね……あのボタンの先に広告つけて荒稼ぎさせてもらった」


ジュン

「すげぇな。……じゃないよ。じゃあ未払い家賃払えよ」


ニノミヤ

「バカ野郎がお前の久々のお出かけで使うんだよ」



ニノミヤ

「ほら、どこ行く?」


ジュン

「……とりあえず、サンシャインとか……?」


ニノミヤ

「無料じゃねーか。でも、それでいいよ」


ジュン

「……へへっ」


ニノミヤ

「うわ……笑顔キモっ。……、……」



ニノミヤ

「ようやく笑ったな」


ジュン

「はは……泣くところじゃねぇだろ。……サンキュー」



§



ネイキッド おわり


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