メタ、パロディなんでもありのファンタジー風のギャグ作品です。令和のノリとかコンプラとか知ったこっちゃねえ的な感じなので、平成風味の懐かしい感じがするかもしれません。
作品概要
男2:女2:不問1(※あくまで目安ですので、基本的にはすべて男女不問です)
登場人物
【不問】クロード・ランドール。14歳。《銀翼亭》のバイトで魔術師見習いの少年。このお話の唯一の良心。
【♀】シズリース・フォン・カルメリア。《銀翼亭》常連の女騎士。その正体は近衛騎士団長。隙あらばルクスを亡き者にしようとするが愛情表現的な何かかもしれない。平成時代の過剰なツンデレヒロイン系お姉さん。
シナリオ
(※「」で括られてない箇所はナレーションもしくはモノローグとしてお読みください)
ここは、冒険者たちが集う宿屋兼酒場 《銀翼亭》。大陸の中でも屈指の交通の要衝となっているこの国には、まだ見ぬ旅の仲間を求めて、世界中からたくさんの冒険者たちが訪れます。
僕の名前はクロード・ランドール。魔術師見習いとして魔法を勉強しながら、縁あってこのお店で働いています。
この人は店長のルクスさん。この国を治める王様と同じ名前だけど、実は国王はいろいろとあくどいことをしているそうで、あまり評判はよくありません。でも、そんな王様に比べたら、店長はすごく良い人です。……まあ、ちょっと、いや、かなり変な人ではあるけれど。
「――ちょっと、ルクス! いるんでしょー⁉ 出てきなさい!」
今やってきたのは、この店の常連であるシズリースさん。店長とは昔馴染みだそうで、〝おシズさん〟って呼ばれています。
「いたわねルクスぅぅぅ! 今日という今日は許さんっっっ‼」
「いいい痛い痛い痛い痛いおシズちゃんちょっとたんま耳引っ張らないで」
「うるさい! あんた、あたしに黙ってこいつに投げ銭したでしょ!」
そう言っておシズさんが《魔導端末》を起動すると、空中投影されたホログラムの映像が浮かび上がりました。
「おお! それは私の最推し! 《魔導チューブ》で活動する《バーチャルマドチューバー》の魔王院マオちゃんだ!」
「こんなガワに騙されてんじゃないわよ! 中身はガチの魔王なんだから!」
「……って、ガチの魔王がなんてことしてんですか⁉」
「曰く、〝人間から富を搾取して破滅させる恐ろしい計画〟らしくてね。今ではフォロワー数も爆上がりなうえ、実際に湯水のように投げ銭しまくって、破産する輩も出てるらしいわ」
「うーん、発想は確かに魔族っていうか、いろんな意味で悪魔の所業っぽい!」
「しかも、『我がカワボと魅力的なガワをもってすれば、人間などイチコロよ!』だとかなんとか言って、アバターのキャラデザも自分でやったらしいし。それにまた自分で言うだけあって、声は良いわ、歌も上手いわ、作詞・作曲もしちゃうわ。そのうえトークスキルも無駄に高いのがクソ腹立つのよね」
「まあ、そのおかげで最近じゃ手段と目的が逆になってて、現実の侵攻作戦がおろそかになってるらしいけど」
「そんなことより! ルクスあんた、《まどつべ》見るの金輪際、禁止だかんね!」
「えーいいじゃんいいじゃん、私だって推し活くらいしーたーいー」
「だからって国家予算の四分の一をスパチャに注ぎ込むバカがどこにいるか!」
「一国の王が敵である魔王の計略にまんまと乗せられてんじゃないわよ!」
「いっこくのおう……? あ、あの、さっきから理解が追い付いてないんですけど、店長ってもしかして、この国の王様なんですか……?」
「な、なんか王様と同じ名前だなとは思ってましたけど!」
「はあ~……そうよ。今まで黙ってたけど……誠に遺憾で残念無念なことに、そいつこそが正真正銘、この国の王。その名もルクス・ハインリヒ・ベルンハルト・ブラシュティス・(※途中で噛んでグダグダになってください)シュベリオン・ローレンハイツ・カール・ウル・レウス・フォン・フォルゼビューネ――
――言えるかボケ!!!!!!!!!!!」
「っていうか、なんでこんな城下町の一角で冒険者酒場なんかやってるんですか⁉」
「それはもう、腕の立つ冒険者を集めて売り出すためだよ!」
「その通り! この私がプロデュースするアイドルグループ《勇者様御一行》としてね! ちなみに、デビューシングルは『グッデイ☆旅立ち』!」
「そして、魔王討伐を目指すワールドツアーを敢行し、その模様は《魔導チューブ》で随時配信! これは売れる! 売れるぞおっ!」
「……でもまあ、正直こいつの言うことも一理あるのよね。この国で勇者パーティーが結成されたとなれば、その宣伝効果は計り知れないわ。だから、どの国もスポンサーとして勇者と専属契約を結ぼうと躍起になってるのよ」
「だったら、おシズさんたちも勇者様を直接スカウトすれば良いんじゃないですか?」
「それができたら苦労しないのよね……。魔王は〝選ばれし紋章の勇者〟にしか封印できないと言われているけど、そんな紋章を持ってる人ったって、年齢も性別も人種もわからない。この広い世界のどこを探せば良いのやら。これだけ魔法による通信技術が発達してるってのに、なかなかうまくいかないもんよ」
「なるほど。そこで冒険者が集まるお店をつくって、自然と勇者様が現れるのを気長に待っていると……」
「はー。それでなんだかんだ店長に付き合ってあげちゃうおシズさんもお人好しというか――」
「……まあでも、一応、秘密ね。私がこんなバカに仕えてる近衛騎士団長なんて巷の人たちに知られたら恥ずかしいじゃない」
「小学校の頃までは仲良かった女の子に、中学に上がったら急に距離とられるやつだそれ」
「ったくさー。おシズちゃんもほんとつれないよなー。私たち小さい頃、城内の庭園で永遠の愛を誓い合った仲じゃないかー。ほら、『大きくなったらルクスくんのお嫁さんになる!』『ルクスくんが王様になったらお妃様にしてね!』って――」
「あたしのッ!(SE:ドカッ) 華麗なる人生のッ!(SE:バキッ) 唯一のッ!(SE:ドゴッ) 汚点ッ!(SE:バゴッ) 黒・歴・史よッ!(SE:グシャッ)」
「あ、あの、おシズさん……それ以上やったらさすがに店長死んじゃ――」
「――いいのよ! こんなやつ多少は死んどいたほうが世界のためだわ!」
「お、おシズちゃん……最近コンプラ的なやつ厳しいんだからさ……」
「いつものことですけど、店長も大概、不死身ですよね」
「慣れとかで済むんだ。……いや、それにしても、店長が王様本人だったなんて……王様の評判あんまり良くないんで、どんな悪い人なのかと思ってましたよ」
「あ、それね、あたしが国内外に流しといたネガキャン」
「いやほら、国民の不満が高まれば、王を倒して革命を起こそうってムーブになるでしょ? そしたら、あたしが先陣を切って王に反旗を翻し、あんたを討ち取る。そしてあたしは救国の聖女として未来永劫、讃えられるってわけ。ね、完璧じゃない?」
「つーか、あんたがこれまで使い込んできた予算のせいで、国の運営が立ち行かなくなってんの、どうしてくれんのよ! なんなら今すぐここで討ち取ってあげても良いのよ⁉ そもそも、この店を始めてから今の今まで、勇者どころか、まともな冒険者すら一人も現れてないじゃない!」
「あ、店長、おシズさん、その辺で! お客さんですよ! ――いらっしゃいませ!」
「はい! ようこそ《銀翼亭》へ! 見たところ、冒険者の方ですよね?」
「ええ。俺は剣士アルフレート、こっちは魔術師のリディアです」
「えっ、その手の甲に浮かぶ、輝く〝紋章〟……まさか、あなたが?」
「ああ……はい、お察しの通りです。……僭越ながら、〝勇者〟と呼ばれる者です」
「す、すごい! 噂をすればなんとやらですよ! 本物の勇者様です!」
「こんな簡単に出会えるとか、今までの苦労は一体なんだったのよ⁉」
「わたくしたち、旅の仲間を求めていますの。お聞きしたところ、こちらにはレベルの高い冒険者が集まるそうですわね?」
「こちらに来れば最高の仲間を得られると、フォロワー数、一千万人の有名マドチューバーがおっしゃっておりましたので」
「あ、僕はクロードと言います。この店でバイトしている魔術師見習いです。で、あちらが店長のルクスさん」
「……あ、えっと……このへぇんに住んでる旅の騎士のおシズさんです」
「一目でわかりました。相当な実力者でいらっしゃいますね。ぜひ貴女を我がパーティーにお迎えしたい!」
「――特に貴女のそのおみ足! 鍛えられた太もも、シュッと引き締まったふくらはぎのライン! 素晴らしい!」
「そ、そう? 言い方がなんかアレだけど、まあ、褒められるのは悪い気はしないわね」
「そんな脳筋ゴリラのどこが良いんだk(SE:殴られる音)――ドォゴフォウッ⁉」
「ところでクロードくん。貴方、魔術師を目指していらして?」
「……良い。すごく良いですわ。わたくし、伸び盛りの子は大好きですのよ」
「さ、寝室に行きましょう。お姉さんが手取り足取り教えて差し上げますわ?」
「セクシーなお姉さんに誑かされちゃういたいけな少年! お約束のヤツきたこれ!」
「すまない、少年。リディアは若くて可愛い子を見ると興奮が抑えられなくなってしまう性質なんだ」
「なるほど。極力オブラートに包んだうえで掻い摘んで言うと、要するに変態さんですね」
「はっはっは! なにはもとあれ、ようこそ勇者くんたち! 歓迎するよ! ゆっくりしていってくれたまえ!」
「おもてなしに感謝します、店長殿。こちらのお店は、冒険者クチコミサイトの《旅ログ》でも高評価でしたからね」
「それにしても、店長殿はこの国の王と同じ名前でおられるのですね」
「いやあ、店長殿は人のよさそうな御仁でよかった。それにひきかえ、この国を治めているルクス王は、歴代国王の中でも史上最悪の王として有名です。国民からの評判はすこぶる悪く、俺の出身地である田舎でも噂が聞こえてくるほどでした」
「ちなみに、お二人が聞いた王様の評判ってどんな感じなんですか?」
「そうですわねぇ。例えば、『隣国の王はあんなにイケメンなのに、どうしてウチのはあんなボンクラなんだ』とか」
「『〝優しそう〟しか褒めるところがない』とか、『陰キャそう』とか『モテなさそう』とか」
「そうそう! そのうえバカだしアホだしゴクツブシだし、人望ないし友だちいないし!」
「おお、店長殿。あなたもこの国の先行きを憂いておられるんですね」
「それなら、この国の王に取って代わって、あなたが王になれば良いじゃない?」
「そう。悪しき魔王を討伐して、ついでに悪政を敷く王まで打倒すれば、民衆はみんなあなたについていくわよ?」
「もしもあなたが王になったらどんな国にしたいのか、聞かせてもらえる? その答え次第では、あたしもあなたのパーティーに加わってもいいわ」
「国民のすべての女性に黒ストッキング着用を義務付けます」
「中でも40デニールが至高です。それ以上厚くても薄くてもいけません」
「もちろん夏場もです。どんな暑い時でも履き続けさせますよ。だって蒸れ蒸れの黒ストとか最&高じゃないですか」
「なるほどね。よくわかった。じゃあ、リディアは? よかったら、あなたの意見も聞かせて?」
「わたくしですか? わたくしが王になったら……まずは、将来を担う子どもたちの学費をすべて無料にしますわね」
「さらに、王立アカデミーを創設し、才能あふれるうら若き少年少女たちを一堂に集め、このわたくし自らの手で、彼ら彼女らに英才教育を……ふ、フフ……」
「……いや、やはり、俺は王にはなれません。民衆を虐げる悪しき王を討つというのであれば、この力を使うのはやぶさかではない。しかし、この力はあくまで民を守るもの。力を持ちながら心弱き者が民の上に立てば、いつしかその力に溺れ、暴君となり果てるでしょう。俺は決して、完璧な聖人君子ではない。王たる器ではないのです」
「ええ、そうね。わたくしたちは、あくまでもただの人間。冒険者であり続けることが、わたくしたちの生き方だと思いますわ」
「……そう。それが聞けて良かった。確かにこの二人なら、あたしたちも全面的にバックアップできそうね」
「本当に真面目で良い人たちなんだなぁ。……変態だけど」
――その時、店の外から喧騒が聞こえてくる(SE:爆発音と逃げ惑う群衆の悲鳴)
「……あ、あれは! 最近ここいら一帯を荒らしまわってるという邪竜だ!」
「曰く、漆黒の鱗に覆われた、天を突くほどの巨体を持ち、二本の足で大地を踏みしめ蹂躙する。そして、その禍々しい口からは、膨大な魔力量の熱線を吐き出し、辺り一面を焼き尽くすという――」
「……黒くて、巨大で、二足歩行してて、口から熱線を吐く……って、ゴジr――」
「大丈夫、声だけならリスナーには見えてないから!」
「こうしてはいられない――行くぞリディア! 街の人を守るんだ!」
「――あっ、瓦礫が! 危ない! ……お怪我はありませんか、お嬢さん。さあ、避難場所はあちらです。今のうちにお逃げください」
「おお! 颯爽と人助けする姿、さすが勇者って感じでかっこいい!」
「ふむ。駆け出していく乙女の、なんと素晴らしき脚線美かな」
「――展開せよ、障壁魔法! さあ、みなさん、こちらですわよ!」
「リディアさんも魔法でバリアを張って子どもたちを守ってます! あんな広範囲にバリアを展開できるなんて、すごい!」
「あらまあっ、そんなっ、あの子たち、『ありがとうお姉ちゃん』だなんて……――フッ、ロリショタいずジャスティス」
「あっという間に避難させちゃうなんて、さすが勇者様たち! 言動はアホっぽいけど!」
「ゆくぞ、邪竜! ――くらえ! なんか強そうな剣技ッ‼(SE:じゃきーん!)
「はあああ……! なんかとてつもない魔法ッ‼(SE:どごーん!)
「勇者様たちの攻撃を食らって、あの邪竜が明らかにダメージを受けてる! 二人ともガチの実力者だったんですね! 言動はアホっぽいけど!」
「アンのパンチ食らったみたいな吹っ飛び方だったな」
「そ、そんな、勇者パーティーでも歯が立たないなんて……」
「今、ヤツを止められるのは、おそらく私しかいない。こんなところで勇者たちを失うわけにはいかないからね」
「いくらあんたでも……本当に死ぬかもしれないのよ?(※半笑い)」
「いいさ。私の命ひとつで勇者たちを、そしてこの国を守れるのならな!」
「あんたってやつは……本当に、大馬鹿よ……自分の命を投げ出すだなんて……(※笑い堪える)」
「くっ……だ、ダメだ……現在の俺たちのレベルじゃ、太刀打ちできない……」
「いいのよ、あんなバカほっとけば。それにたぶん、あの邪竜をなんとかできるとしたら、今この場において、あいつしかいないのは確かよ」
「ま、あのバカと邪竜が共倒れになってくれりゃ、一石二鳥だしね!」
「――そこまでだ、悪しき邪竜ッ! この私が成敗してくれる!」
「そんなっ、あの熱線を受けたら、ひとたまりも……!」
「うおおお! まだまだあああ‼ こんなものでええええ‼」
「バカな! ……あれを食らって生きているなど、店長殿は不死身なのか⁉」
「店長生きてたからってマジで絶望の表情するのやめてくださいおシズさん」
「やはり、相当なダメージを受けていらしたのね……!」
「あ、見てくださいまし! 店長さん、ご自身で吐き出した血でダイイングメッセージを!」
※次のピー音はそのまま口で言っても、実際に音をかぶせても、もにょもにょ言ってごまかしてもなんでも大丈夫です。やりにくければ「名前を書くんじゃない、名前を」にしてしまっても構いません。
「ゴ(ピー)ラって書くんじゃないゴ(ピー)ラって! しかもご丁寧にイラストまで!」
「……イラスト付きでダイイングメッセージ書けるくらいなら全然余裕ですね」
「そ、そんな……! あんなにボロボロになってまで、どうしてまだ立ち上がろうとするんですの……⁉」
「店長殿……! 貴方がそれほどまで体を張る必要はありません! 俺たちのことは気にせず、お逃げください!」
「そうよ! あんた充分がんばったでしょ! もう楽になりなさい! なんならあたしが楽にしてあげるから!」
「……いいや。ここで退くわけにはいかないね……!」
「――国民のみんな……ちょっとだけでいい、オラに魔力を分けてくれ!」
※次のセリフはルクス役のモノマネのクオリティに合わせて判断してください。アドリブでセリフ自体を変更してしまっても構いません。
「(全然似てないのが or 無駄に似てるのが)腹立つわね」
「いくぞ! 流星衝撃魔法――メテオドライバああああああッ!」
「――と見せかけて体当たりいいいいいいいいいい‼」
その瞬間、店長と邪竜はともに大きな爆発の中へと消えていきました。
そして、爆発の際に舞い上がった厚い砂煙(すなけむり)が晴れたとき、僕たちの目に映っていたのは――
「ともあれ――こうして、バカ一匹の尊い犠牲によって、王国は救われたのであった! めでたし!」
「店長殿……邪竜を道連れにするなんて……貴方こそ本当の勇者です!」
「店長さん……あなたの勇気、決して忘れませんわ……!」
「……あ、あのー、感動してもらってるところ悪いんだけど、私まだ生きて……むぎゅっ」
「――でもまあ、なんだかんだあいつがいなくなると寂しくなるわねー」
「(無視して)――さあ、みんな、祝勝会しましょ! 今夜は宴よ宴! めでたいからお赤飯焚くわよ!」
「ちょ、待っ、待って、おシズちゃっ、そんな、何度も、ジャンプしないでッ」
「――ハッ! おシズさんが踏んでらっしゃるそのボロ雑巾みたいな汚らしい物体は……ま、まさか、店長さんですの⁉」
「い、生きておられたのですか⁉ ……おシズさんのおみ足で踏まれるとは……な、なんて羨ましい……!」
「いや! あたしたちは何も見てない! 見なかったことに! 見なかったことにしよ!」
「おシズちゃんっ、やめて、土かけないでっ! 埋めようとしないでッ!」
「どっから持ってきたんですか、その大きなスコップ」
「クロードくん……これは! シャベルよ!(※ド真剣に)」
「……おシズさん……店長殿は一体、何者なんですか? 我々のレベルはまだ駆け出しとは言え、並みの冒険者よりは腕は立つと自負しています。しかし、それを軽々と上回るあの戦闘力は……」
「どうやら、この街には店長さん自身の魔力を増幅させる〝魔法陣〟が敷かれているようですわね。街全体を範囲とするほど大規模なうえ、邪竜をも消滅させるほどの魔力を集められる実力者なんて、この世界広しと言えども、そうはおりませんわ」
「……この人たち、実力だけは確かなんだよなぁ。実力だけは」
「はあああああ(深ぁいため息)……バレちゃっては仕方ないわ。……こいつはね、まさしくこの国の王にして、世界でも屈指の大魔法使い。そして私は、このバカのお目付け役、兼、近衛騎士団長のシズリース・フォン・カルメリアよ」
「リディアの言う通り、こいつは王都全域に敷かれた魔法陣によって、この国を守れる程度の力は出せる。だけど、それも今回みたいな緊急時にしか発動できないし、そもそも魔王の封印は、紋章を持つ勇者にしかできないからね。それで、将来性のある勇者を求めて、お忍びでこの店を営業してたのよ」
「まあ、そういうことだよ、アルフレート君、リディア君。キミたちには、ぜひこの国を拠点に、がっつり経験値を稼いでレベルを高め、魔王討伐に臨んでもらいたいんだ」
「まさか、店長さんが国王陛下でいらしただなんて……わたくしたちは、なんというご無礼を!」
「ああ。俺たちは誤解していました。貴方が最悪の王などとは、とんでもない。貴方こそは、誠の善き王です!」
「ふふーん、くるしゅうないくるしゅうない! ならば今一度、我が名をその耳に刻み付けるがよい! そう、この私こそが、ルクス・ハインリヒ・ベルンハルト・ブラシュティス(※途中で噛んでグダグダになってください)・シュベリオン・ローレンハイツ・カール・ウル・レウス・フォン・フォルゼビューネ――
――言えるかボケッ!!!!!!!!!!!!!!!」